沖縄で「暴走族のパシリ」になる

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打越 正行 プロフィール

職務質問を受ける

ところで、私を怪しんだのは暴走族の子たちだけではなかった。

私はその当時、警察からの職務質問をたびたび受けていた。職務質問は取材期間中に10回以上あり、特に取材した若者からもらった暴走族仕様のステッカー(写真)を張り付けてからは、運転中にもとめられることが増えた。

私は暴走族やヤンキーの若者に、自分のことを覚えてもらうために、毎日同じジャンパーを着て取材に向かった。しかし、私を覚えたのは警察の方で、「あなた、いつもいるよねえ」と声をかけられた。

筆者

「取材で来ています」と伝えたが、「県条例(未成年の深夜はいかいを規制する条例)もあるから捕まえるよ」と脅された。

そうやって何度も免許証の提示を求められるので、「そちらも警察手帳を見せてください」と、私もまた警官に同じことを求めるようになっていった。

警官「免許見せてくれるかなあ」
――「まずは警察手帳を見せるのが先じゃないですか。」
警官「(しぶしぶ、みせる)いいですか。」
――「メモるから待ってよ。〇〇署の○○さんね。」
警官「免許見せて。」
――「(相手に渡さずに、手で持って見せて)はい。」
警官「ちょっと貸してくれる?」
――「貸すのはできないんじゃない?ちゃんと手続き通りにすすめないとまずいよ。」
警官「はい、ご協力いただきありがとうございました。」

 

ただこのように私が職務質問を受けている様子は、取材している男の子たちにはおもしろかったらしい。私のことを私服警官とうわさしていた彼らにとっては、制服の警官が私服の警官に職務質問をしている様子としてうつったからだ。

ただそれも数回繰り返されると、警察がそこまで手の込んだことはしないだろうと、彼らは考えたようで、私が私服警官である疑いははれた。

職務質問で警官ともめると、彼らと関係を築くチャンスになることを知った私は、調子に乗って職務質問をする警官に積極的に絡んでいくようになった。

新たなコンビニで新たな若者に取材をする際などに職務質問をされると、「よし(いい機会が)きた」と考え、実際に警官とやりあう姿を彼らにみせつけるようにアピールした。

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