競争か共存か
学習塾大手で『東進ハイスクール』『四谷大塚』などを運営するナガセ社長の永瀬昭幸氏が言う。
「私は一人の教育者として、次世代の若者たちに夢を持ってもらいたいと思っています。しかし残念ですが、人口が減り、国力が衰退する中で夢を語ることは難しい。私はこのままでは日本が消滅するという危機感すら覚えています。
かつてローマ帝国も少子化の危機にありましたが、初代皇帝アウグストゥスが徹底した少子化対策を打ち出すことによって、その後数百年に及ぶ繁栄を勝ち取りました。
日本でも第三子以降の出生に政府が1000万円支給するなど、抜本的な少子化対策が喫緊で必要だと思います。
一方、一人の経営者としては、国内での教育ビジネスにはまだまだ成長余地はあると思っています。東進ブランドはいま高校生の部門でトップシェアですが、それでも国内シェアは12%にすぎません。企業努力をすればこのシェアを3割、4割と伸ばしていくことができるでしょう。
海外に進出していく前に、まだまだ国内でやるべきことはたくさんあるし、伸びシロもある。われわれも、さらなるサービスの充実に力を入れていく」

人口減少時代の企業経営は、トップが戦略と決断をひとつでも誤れば、会社が一気に「即死」に追い込まれる危険がある。しかも、少ないパイを奪い合う生存競争では、多くの企業が敗者に堕ち、勝ち残れるのは上位1~2社だけ。
多くの敗者の残骸のうえに、少数の勝者が君臨する。これが未来の企業勢力図のリアルだ。
サントリーHD社長の新浪剛史氏も言う。
「少子高齢化・人口減少によりマーケットの大きな伸長は望めない中で、他社では真似できない唯一無二の商品を開発し、お客様のニーズにお応えしていくことが重要。
たとえば、高い品質の本当においしいビールやウイスキーを飲みたいという需要は大きく、現在の厳しい市況の中でも『ザ・プレミアム・モルツ』やジャパニーズウイスキーなど、プレミアムな酒類製品は好調だ。
また、トクホ、天然水、緑茶などの飲料やサントリーウエルネスが展開する健康食品など、お客様の健康に貢献する飲料・食品には、今後さらに高い成長が期待できる。グローバル化を進める上でも国内事業は企業にとって足腰であり、しっかりと取り組む必要がある」