【徹底調査】人口減少ニッポン・あの大企業はどうやって生き残るか

トヨタ、金融、サントリー…それぞれの対策
週刊現代 プロフィール

実はこうした人口減少時代の到来を受けて、これまでの常識では考えられない、まったく新しい「競争の形」も生まれてきている。

たとえば、飲料業界。新浪社長が語った通り、アサヒグループHD、キリンHD、サントリーHDによる商品開発競争が激しいが、業界内では並行するように「競争から共存へ」という新しい生き残り戦略が始まっている。キリンHD幹部は言う。

「たとえば、うちはライバルのアサヒとビールの共同輸送を始めているほか、日本コカ・コーラグループとも共同配送や共同調達を進めている。

磯崎功典社長は、『現在のような大手4社体制がいつまでも維持できるとは思えない』と公言し、闘うところは闘うが、手を組むべきところは組まないと共倒れするとの危機感を持っている。今年9月からは、アサヒ、サントリー、サッポロと北海道で共同配送も始める」

実はこうした「競争と共存」戦略は各業界に広がっていて、製薬業界では武田薬品とアステラス製薬が医薬品の共同保管・輸送を決定。化学業界でも、東レ、三井化学、出光興産などがトラック輸送で提携を始めた。

航空業界にいたっては、長年のライバルであるJAL(日本航空)とANA(全日本空輸)HDの「強制的協調」が始まる可能性もある。

JAL ANAPhoto by GettyImages

損保、不動産は業態転換へ

というのも、人口減少化での地域航空会社対策を検討してきた国土交通省の研究会が、この6月にまとめた『中間とりまとめ』で〈航空会社間において、競争という次元ではなく、協業を行うことが必然〉と断言。

異例のことながら、JALとANAが手を取り合うことで、航空業界を存続させることを要請してみせたのである。

地域路線では「協調」しながら、海外路線ではライバルとして争う――それが航空業界の未来図になるかもしれない。ANAHDの片野坂真哉社長は言う。

「人と人、地域と地域をつなぎ、地方創生と連動した大都市圏から地方への流動を促進する。都会から地方への新しい需要を創出するために、日本が誇る各地のさまざまな魅力を積極的に発信していく。

長い目で見れば国内の航空需要が鈍化していくことが予想される中、訪日需要の取り込みや新規需要の開拓も必要となってくる。最近では、LCC(ローコストキャリア)が一つの大きなブームになっている。

(ANA傘下の)バニラエアは成田・首都圏を、また(同傘下の)Peach Aviationは関西マーケットを中心に新たな需要を掘り起こしており、この流れは当面続くだろう。

全世界の中で、北東アジアにおけるLCCのマーケットシェアは10%程度に留まっているが、欧州等は30%程度の水準にあり、拡大の余地がある。新規需要を余すところなくANAグループに取り込むことが最大のポイントだ」

 

人口減少という大きな波を乗り越えるべく、「業態転換」に走る企業も出てきている。

典型的なのが、保険業界。あいおいニッセイ同和損保の金杉恭三社長が、「高齢社会の到来にともない、高齢のドライバーが増加する。

当社は急発進、急ブレーキ等の運転挙動を捉えるテレマティクス技術によって、高齢者にさまざまな運転アドバイスサービスを行うことで、高齢者の安全なカーライフをサポートしていきたい」と言うように、損保ビジネスは「保険」から「サポート」への事業転換が進んでいる。

SOMPOHD幹部も言う。

「これまでの損保ビジネスは事故があった時に金銭面で補償するものだが、いま進めているのは事故を防ぐためのサポート。運転情報をデータで収集して、安全運転しているほど保険料を安くするという、テレマティクス技術を使った商品などを開発している。

医療分野が『未病』を進めているように、損保も『予防事業』への拡大を始めた」

不動産業界では、「ハード」から「ソフト」への転換を急いでいる。

「住宅もオフィスも供給過剰で大きく伸びが期待できない中、三井不動産などは千代田区、港区などに坪1000万円超の高級マンションを作り、そこでコンシェルジュ的なサービスを含めた『ソフトウェア』を売り物にするビジネスを始めている。

さらに、これまでのように箱モノを作るだけではなく、箱の中の商売で直接収益を得るビジネスモデルにシフトする動きも出ている。典型的なのがホテルや物流倉庫で、NTT都市開発やサンケイビルなどの大手も積極的です」(オラガ総研代表の牧野知弘氏)

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