2033年団地やマンションがスラム化
「これから空き家が大問題になるのは首都圏です。郊外に暮らしてきた団塊の世代が2023年には後期高齢者となり、施設に移るなどしますが、その家の引き取り手がいない。売りに出そうにも需要はない。
結果、大量の空き家が発生します。世田谷や杉並、練馬といった土地でも、駅から少し離れた場所では、そういった状況になっていく」(オラガ総研代表・牧野知弘氏)
野村総研の推計によれば、2033年には日本全国の3戸に1戸が空き家になっているという(ページ末の図参照)。総住宅戸数は約7126万戸へと増大、空き家数は約2167万戸にもなる。
「戦後、マンションや戸建てが建設され、住宅の供給が続けられてきましたが、これは現在から見れば供給過剰でした。
今後の首都圏では、駅から少し離れれば、団地もマンションも、買い手がつかず、商品価値がなくなってしまう。家やマンションが、毎年固定資産税を食っていくだけの不良債権となるのです。
空き家率が30%を超えた地域は、治安が著しく悪くなると言われています。そうした地域はスラム化したり、犯罪の温床になったりする可能性が高い」(前出・牧野氏)
高齢化率が高い地域は、とくに空き家率が高くなりがちだ(ページ末の図参照)。
さらに、こうした場所ではインフラの問題も深刻化する。
老朽化するインフラ整備にかける予算は年々増加しており、国土交通省によれば、2033~2034年にかけて、最大の5兆5100億円が投じられると見られている。インフラ問題に詳しい東洋大学の根本祐二教授が指摘する。
「日本では1970年代がインフラ投資のピークで、その耐用年数は50~60年程度。それゆえ、'20~'30年代に改修のピークを迎えます。
しかし、全国のインフラを一気に改修する財源はとても捻出できない。そのために、インフラの老朽化だけが進んでいくのです」
事故もすでに起きている。'12年には山梨県の笹子トンネルの崩落が、'13年には浜松市の弁天橋のワイヤー切断、'14年には京都市の水道管破裂が起きた。根本氏が続ける。
「水道管は、水圧をかけて流しているため、ほんの小さな穴があいただけでも、破裂してしまう。そうなると、一旦水を止め、修復をするために半日くらい断水することがあります。
また、吹き出す水の圧力は強く、非常に危険です。しかし、今後はこうした事故が頻発しかねない」

学校や図書館などの公共の建物にも改修が必要なものが多いが、手つかずのままになる。