金正恩の暴走がとまらない。
北朝鮮は7月4日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を成功させた。北のICBMは、既にアラスカやハワイを攻撃することが可能といわれる。「あと5年もすると、北は米国全土を核攻撃する能力を獲得する」と分析する専門家も多い。
ICBM発射は、「レッドライン」と思われていたが、米国は、事実上どうすることもできないでいる。日本、韓国と共に軍事的圧力を強めながら、北朝鮮貿易の90%を占める中国に「もっと圧力を」と要求するのが精一杯だ。
ところで、この地域のもう一つの「主要プレイヤー」であるはずのロシアの動きが見えてこない。剛腕プーチンは今、北朝鮮について、何を考えているのだろうか?
いまだ「戦争中」という世界観
北朝鮮の話をする前に、プーチンが今の世界とロシアをどのように見ているのかを、整理しておこう。
プーチンは、1952年生まれ。1975年にレニングラード大学を卒業し、KGBに入った。そして、1998年には、KGBの後継組織FSBの長官になっている。つまり、プーチンは、「諜報機関のトップまで昇りつめた男」なのだ。

そんなプーチンが生まれてから39年間存在していたソビエト連邦とは、どのような国だったのか?
ソ連は、1917年のロシア革命によって誕生した、マルクスの「共産主義」をベースにつくられた国だ。共産主義の世界観は、「悪い資本家が、世界を支配している。労働者は、資本家階級をぶちのめし、万民平等の世界をつくろう」というものだった。
ソ連は、「労働者の利益を代表する国」であり、主要な敵は、「資本主義の総本山」米国であった。
したがってソ連では、徹底した「反米教育」が行われた。CIAと戦うKGBの反米教育は、さらに厳しいものだっただろう。そんなわけで、プーチン及びロシアの指導層にとって、米国は「最大の敵」なのだ。
問題は、ソ連崩壊後だ。
ソ連が崩壊した後、ロシアの「米国観」は変わったのか? 残念ながら、あまり変わっていない。
ロシアの支配層によると、米国はソ連崩壊後、新生ロシアに“わざと”間違った経済改革を実施させた。本当に「わざと」かどうか、真相はわからない。しかし、新生ロシアが、米国やIMFの勧める経済改革を実施した結果、1992~98年、GDPが43%も減少してしまったことは事実である。