この国では再び「軍事と学術」が急接近してしまうのか?

50年ぶりの「声明」を読み解く
杉山 滋郎 プロフィール

文部科学省は2008年度から、日本を世界により開かれた国とする「グローバル戦略」の一環として「留学生30万人計画」を進めている。2020年を目途に30万人の留学生を受け入れるというもので、昨年5月の段階で約24万人まで達している。

また2014年度から「スーパーグローバル大学創成支援事業」を開始し、大学が外国人専任教員の割合を増やしたり世界トップレベルの大学との交流・連携に取り組むことを支援している。

こうした「国際化」に伴い、大学における「安全保障輸出管理」の重要性が急速に高まってきた。

工業製品や技術が、輸出先で武器などに転用されるのを防ぐため、わが国では「外国為替及び外国貿易法」(外為法)に基づいて貿易管理がなされている。安全保障の観点からなされるこうした輸出管理は、「もの」だけでなく、形のない「知識」や「ノウハウ」に対しても及ぶ。

知識やノウハウを身につけた人物が出国すれば、「もの」の輸出と同じことになりかねないからである。したがって大学の研究者は、教育者でもあるだけに、対応の難しい問題に直面することになる。

 

たとえば留学生や研修生をめぐる問題がある。彼らは、来日後6ヵ月の間、外為法で「非居住者」として位置づけられる。そのため彼らに、同法に定められた機微(sensitive)な情報・知識・ノウハウなどを提供するには、経済産業大臣の許可を得なければならない。

また、6ヵ月を1日でも過ぎれば問題がなくなるのか、受け入れた研究者は悩むこともあるだろう。

さらに政府は、留学生や研修生へのこの規制期間を「滞在5年未満」に延長することを検討しているとも伝えられる。これはこれでまた、教育や研究にとって障害となりかねない。

大学がこうした状況にあるところに、「防衛用途への応用という出口を目指して」と謳う「安全保障技術研究推進制度」が登場したのだから、大学関係者の間に警戒感が強く働いたのは無理もない。

(「科学史の泰斗が問う、日本科学界のタブー」につづく)

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