「強制退去」を命じられる、中国残留孤児2世らの悲鳴

母の死を嘆き、自分の血を売り
平井 美帆 プロフィール

方針にずれがありはしないか

1世の死亡時、2世が60歳以上であったならば、「高齢者」区分となって、都営住宅の使用を承継できる。一方、60歳未満、片親をすでに亡くして使用を承継できる者がいない――。こうした条件が重なると、否応なしに退去を迫られる。国籍は退去とは表面的には無関係だが、中国国籍ではやはり日本で暮らしていくには不利である。

2世はさらに、1世の「同伴家族」と「呼び寄せ家族」に分かれ、家族分断を生みやすい要素を数多く抱えてしまう。国は、高齢残留邦人が永住帰国する際、1世を扶養するために同伴帰国する2世家族、1世帯のみを援護対象とするため、他のきょうだいが日本へ移住する場合は「呼び寄せ家族」と呼ばれ、援護対象から外れるのだ。

もっとも、低所得者向けの都営住宅の使用は抽選が原則である。いったん入居したからといって、名義人が亡くなってからも同一親族に住み続けられると、他の入居希望者との間に不公平が生じてしまう。そのため、東京都は2007年に都営住宅の使用承継制度を厳格化し、使用を承継できるのは原則、「配偶者」のみとした。

例外として設定された「高齢者」「障害者」「病弱者」は、名義人の三親等親族までは使用を承継できる。このルールのみに機械的に従えば、同居していた残留孤児1世が亡くなったとしても、2世は個別の事情を考慮されることなく、住居を明け渡さなくてはならない。

しかし、1993年には日本と中国のあいだで、残留邦人とその家族の帰国についての口上書が交わされている。

「日本政府は、日本国内において、これらの家族の法律上の正当な権利を保護し、日本での生活、就業、学習等の面における便宜を図る」
 
翌1994年に制定された中国国残留邦人支援法9条2項には、「地方公共団体は、公営住宅の供給を行う場合には、永住帰国した中国残留邦人等及びその親族等の居住の安定が図られる特別の配慮をするものとする」とある。

2世の現状を見るかぎり、「特別の配慮」は見受けられない。国が決めた方針と、実際の都営住宅の運用がずれているのではないか。こうした疑問を、JKK東京を指定管理者に置く東京都都市整備局に書面で訊ねた。

だが、2世の居住の安定にかんする言及はなく、「入居後については、都営住宅の入居者として他の入居者と同様に取り扱っている」という回答だった。

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