医師たちが告発「がん免疫療法、うかつに信じてはいけない」

藁にもすがる思いの患者をそそのかす
片田 直久 プロフィール

免疫療法クリニックの多くは共通した「ビジネスモデル」がある。とあるクリニックグループから院長のポストを提示されたことのある医師が証言する。

「採血した血液を処理する細胞加工業の事業者がめぼしい医師に声をかけます。そして医院開業から経営までのすべてをコンサルティングする。医師は週に何日かクリニックに通うだけで、2000万~3000万円の年収を確保できるのです」

免疫療法ビジネスは、ますます「洗練」されてきており、最近では他に治療法のない末期患者だけでなく、抗がん剤投与を始めたばかりの患者も標的にされるようになった。まだ患者の体力がある分、免疫力を高めることに意味があるという理屈だ。

こうしたクリニックの医師たちは一様に「優しい」。少なくとも表面上は、絶望した患者の声に耳を傾ける。だから患者もその家族も、免疫療法に疑問の声を上げることはまずない。

「おカネと時間をかけた治療の選択肢が間違っていたとは、誰も認めたくありませんからね」(前出の片木氏)

 

前出の山本教授が語る。

「自由診療で行われている免疫療法の多くは、実験的な治療を行っているにもかかわらず、臨床試験の枠組みから外れている。言語道断です」

少しでも長生きしたいと望む患者の弱みにつけ込み、効果の定かではない高額治療を奨める――「医は算術」と考える医師たちがいかに多いことだろうか。

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