2017.08.26
# 格闘技

世界最大の格闘技イベント「UFC」は、いかに日本市場を攻略するか

日本発のスター選手を育てるのがカギ
細田 昌志 プロフィール

日本のファンが特別である理由

──現在「アジアコンテンツ副社長」という任にありますが、具体的に主な仕事内容を教えて下さい。

ケビン まず、メインの仕事は、UFCにおける「三本の柱」と呼ばれているもの、これをさらに伸ばすことです。その柱というのは「ライブの成功」「ローカルタレントの発掘と育成」「メディアとのスクラム」。UFCを世界に根付いたスポーツにするために、各地域でこの三本の柱を育てる。

これらをアジア市場でも実行していくのが当面の目標です。UFCという「ライブ空間」をアジアに持ってきて、より多くのファンに生のイベントを体感してもらう。そして、アジア人ファイターを数多く作り出す。その両方を巧く回すためには、地元のメディアとのパートナーシップを強化する必要があります。

日本でも9月にUFCの大会が開かれますが、UFCを成功させるには、日本のスターを育てる必要があります。そして、そのスターを知ってもらうには、日本のメディアに協力を仰がなければなりません。

率直に言うと、この点がいままでは弱かったのではないかと分析しています。いまはフジテレビさんをはじめ、選手と大会の露出を増やし、またネットメディアを中心に、少しでも魅力的な情報を流してもらえるように、その関係を強化しているところですね。

 

──ケビンさんは、UFCにとってのアジア市場の魅力はどこにあるとお考えでしょう?

ケビン アジアというのはMMA発祥の地にして、中国、韓国、そして日本と、あらゆる武道の母国だから、歴史も深い。そもそも人々の心の中に武道が根付いていますよね。彼らの文化には敬意を表したいですし、かつ、根付いているからこそ、とても大きなマーケットがある。ぜひ、自分たちの文化の延長線上にある、UFCというスポーツを知っていただきたいのです。

特に日本は古来発祥のオリジナルの武道があることはもちろん、洗練された「ファン」の存在がとても多い。私はいつも日本のファンの知識の深さには感心していますよ。世界にもUFCのコアなファンはいますが、彼らはどちらかというとUFCという枠内で物事を語ります。

ところが日本のファンは、UFCや選手について、歴史的な視点からも語るのです。これは深い知識がなければできることではありません。例えば……UFCのルールと、他の団体のルールの違いを理解しているのは、間違いなく日本のファンが多いんだよね(笑)。これは他の国のファンにはないことです。

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──確かに(笑)。日本における総合格闘技の歴史が、そのままMMAの歴史とリンクするからでしょう。「佐山聡の思想がそれを生み出した」と長年のファンであるわたくしは考えています。

ケビン なるほど。一方で、だからこそ、の難しさがありますね。日本のファンは目が肥えていますから、小手先の見せ方では満足していただけません。さらに、日本のファンは格闘技を歴史物語のように見るところがありますから、ストーリーラインにもこだわらなければなりません。

ここがとてもチャレンジングだと思っています。それゆえにUFCとしては、アジア全体の中でも、日本というマーケットを成長させる必要性の大きさを痛感しています。日本のファンが認めるイベントに成長すれば、アジアでのさらなる成功が見込まれますから。北米や欧州と比較して、この先も成功の余地があるのはアジア市場ですから、やりがいがあります。

──では、その日本市場における戦略は、現在予定通りに進んでいますか?

ケビン 間違いなく正しい方向に進んでいると思います。その理由の一つは「メディアパートナーの力」です。「カクトウギ」というと、一時期日本では非常にネガティブなイメージをもたれる、そんな状況にあったことを知っています。でも、最近はそのイメージももう古いものになっていますね。

そのような中で、イノウエ(井上直樹、19歳でUFCと契約。今年6月のデビュー戦で判定勝ちを収めた)のような最年少の選手が生まれてきています。日本での開催は2年ぶりになりましたが、このいい流れが後押ししてくれて、必ずやいい大会になると確信していますよ。

──ちなみにケビンさんにとって古今問わず、好きな日本人ファイターは誰ですか?

ケビン サクラバサン! 彼は本当にUFCにとっても大きな存在です。日本だけじゃなくて世界中から尊敬を集めているのは間違いありません。それはやっぱり、「MMAのパイオニア」という評価を世界中のファンから集めているからです。だからUFCとしても「殿堂入り」という形で、彼のこれまでの功績を褒賞する必要があった。イノウエもサクラバサンみたいなファイターになってほしいし、なれると信じています。

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