知らなきゃよかった…日本の空は「実はアメリカのもの」だった

エリート官僚も見て見ぬふりの真実
矢部 宏治 プロフィール

世田谷区、中野区、杉並区の上空も「横田空域」

まず、たしかな事実からご紹介しましょう。横田空域は、東京都の西部(福生市ほか)にある米軍・横田基地が管理する空域です。

もう一度、図1を見てください。大きいですね。いちばん高いところで7000メートル、まさにヒマラヤ山脈のような巨大な米軍専用空域が、日本の空を東西まっぷたつに分断しているのです。

ここで「米軍基地は沖縄だけの問題でしょう?」と思っている首都圏のみなさんに、少し当事者意識をもっていただくため、横田空域の詳しい境界線を載せておきます(図2)。

図2 東京都心部(23 区内)の「横田空域」の境界線

東京の場合、横田空域の境界は駅でいうと、上板橋駅、江古田駅、沼袋駅、中野駅、代田橋駅、等々力駅のほぼ上空を南北に走っています。高級住宅地といわれる世田谷区、杉並区、練馬区、武蔵野市などは、ほぼ全域がこの横田空域内にあるのです。

この境界線の内側上空でなら、米軍はどんな軍事演習をすることも可能ですし、日本政府からその許可を得る必要もありません。2020年(米会計年度)から横田基地に配備されることが決まっているオスプレイは、すでにこの空域内で頻繁に低空飛行訓練を行っているのです(富士演習場~厚木基地ルートなど/オスプレイの危険性については『知ってはいけない――隠された日本支配の構造』第2章で詳述しています)。

むやみに驚かすつもりはありませんが、もしこの空域内でオスプレイが墜落して死者が出ても、事故の原因が日本側に公表されることはありませんし、正当な補償がなされることもありません。

そのことは、いまから40年前(1977年9月27日)に同じ横田空域内で起きた、横浜市緑区(現・青葉区)での米軍ファントム機・墜落事件の例を見れば、明らかです。

このときは「死者2名、重軽傷者6名、家屋全焼1棟、損壊3棟」という大事故だったにもかかわらず、パラシュートで脱出した米兵2名は、現場へ急行した自衛隊機によって厚木基地に運ばれ、その後、いつのまにかアメリカへ帰国。裁判で事故の調査報告書の公表を求めた被害者たちには、「日付も作成者の名前もない報告書の要旨」が示されただけでした。

 

いまも中国・四国地方を覆う岩国空域

こうした米軍が支配する空域の例は、日本国内にあとふたつあります。中国・四国地方にある「岩国空域」と、2010年まで沖縄にあった「嘉手納空域」です。

図3 「岩国空域」

上の図が、これまであまり取り上げられることのなかった「岩国空域」です。「横田空域」と同じくこの「岩国空域」もまた、山口県、愛媛県、広島県、島根県の4県にまたがり、日本海上空から四国上空までを覆う、巨大な米軍管理空域です。

この空域内の松山空港に向かう民間機は、米軍・岩国基地の管制官の指示どおり飛ばなければなりませんし、空域のすぐ西側にある大分空港へ向かう民間機も、高度制限など大きな制約を受けています。

岩国空域に関して印象に残っているのは、2016年にオバマ大統領(当時)が広島を訪問したときのワンシーンです。アメリカ大統領による初めての「歴史的な」広島訪問に際して、オバマ大統領は中部国際空港から大統領専用機で米軍・岩国基地に移動したあと、この岩国空域を通って、海兵隊の軍用ヘリで原爆ドームへ向かったのです。

車で行けばわずか40キロ、たった1時間で行ける距離をわざわざ軍用機で、しかも4機のオスプレイに先導されるかたちで移動した。さらに同行する大統領付きの武官は「フットボール」と呼ばれる核兵器の「発射キット」を携行していました。

アメリカ大統領とは、すなわち核兵器を世界戦略の中心に据えた世界最強の米軍の最高司令官であり、彼は日本の上空を事実上自由に、自国の軍用機を引き連れて移動することができる──皮肉にも、そうした歪んだ現実世界の姿をまざまざと見せつけた、ノーベル平和賞受賞大統領の広島訪問となりました。

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