北朝鮮危機と世界政府
北朝鮮がもたらすかもしれない核戦争について、緊急にしなければならない提言がある。それは次の二つだ。
①「核戦争をさせない」という用途に限定した世界政府を樹立する必要がある。それ以外に核戦争の危機を脱する手段はない。現在進行中の危機は、この限定世界政府を立ち上げるチャンスにもなっている。
各国は世界政府のもとで核戦争回避チームを組むべきである。メディアや国際団体は世界政府を求める地球規模のキャンペーンを張ることで、この動きを加速することができる。
②右派と左派の論点抱き合わせセット(図)で集団思考する習慣は危険である。日本では、現在政権の中枢にある右翼勢力を排した、右でも左でないリベラル・デモクラシーのリアリスト政権を樹立する必要がある。

まず世界政府について述べよう。
世界政府はすでに哲学者カントの時代から論じられているが、それには大きな困難がある。
権力は必ず腐敗する。もし世界政府が強大な権力をもったままどこまでも腐敗したら、未来永劫地獄のような状態が続きかねない。それを考えると、むしろ現在のように複数の国々が、自国の利益を極大化するために陰謀をめぐらし、非難しあい、足をひっぱりあう状態の方が望ましいとすらいえる。
たとえば現在、米、中、ロなどの大国は一般人の基準からは大きな悪をなしながら、互いに足を引っ張りあい、どのプレイヤーも、おもいどおりに無制限の悪をなすことができなくなっている。これは、修正できない絶対的な世界政府のもとにあるよりは望ましい世界のしくみであろう。
また、なぜ世界政府ができないのかという質問に対して、「宇宙人が攻めてこないからだ」というユーモラスな答えがある。宇宙人が攻めてくるような事態でもないかぎり、世界政府をつくろうなどと誰もまじめに考えない。
しかし、人類が核を手にしてしまったことが、宇宙人による侵略と同じ事態を生み出した。核戦争や原発事故によって人類が絶滅しかねないのである。
核は、国家の主権によってどのようにでも扱ってよいものではない。国家を超えた上位のコントロールが必要になる。ここに世界政府形成のチャンスが生じる。
このチャンスは、当事者が意識していてもいなくても、全人類的な危機のときには自然発生的に生じる。
たとえば、キューバ危機で核戦争一歩手前まできたときの米ソのホットラインは、自覚されざる世界政府の萌芽であった。
米ソの全面核戦争が起これば人類は絶滅していただろう。このときアメリカも旧ソ連も、「本当に核戦争が起こると困る、そんな選択は、ほんとうは何があってもできない」という動かざる国家運営集団の意志を持っていたと考えられる。だから、ホットライン程度でなんとかなった。
だが今回の北朝鮮による核戦争危機は、条件が異なっている。