2017.10.05
# 選挙

小泉進次郎が今度の選挙で新聞記者を「挑発」する理由

2017衆院選・密着ルポ➀
常井 健一 プロフィール

自民党単独政権への布石か

純一郎はこの主張を公の場でも繰り返している。9月6日に大阪であった講演でも、安倍晋三が衆院解散を表明した直後の26日昼に都内であった講演でも、同様の持論を吼えている。息子が切り出したのは山形での24日。父と同じ26日にも同じ考えを党本部での講演で語り、阿吽の呼吸で足並みを揃えた。

その前日の25日には小池が父・純一郎と極秘会談を行い、「近さ」をアピールしたばかりだった。「原発ゼロ」を合言葉に小池と父が連携するという憶測がメディアに蔓延する中、息子は改革保守の代名詞である「小泉」の金看板を自民党に取り戻す役割を担ったのだ。

冒頭の囲み取材では、父との違いを問われると「私だって原発ゼロにすべきだと思っている」と踏み込んだ。小泉進次郎という政治家は、これまで原発政策の方向性について「議論の必要性」を訴えるまでにとどめ、いつも報道陣を煙に巻いてきた。その彼がテレビカメラの前で初めて、党の方針を飛び越えて「ゼロ」と言ったのだ。

 

解散前後の数日間、進次郎は小池が父を利用して打ち立てる戦術を次々と潰していった。その表情は、まるでモグラたたきを楽しむかのように笑っていた。一方の小池は公の場でも苛立ちを隠せなくなった。

「進次郎さんがキャンキャンとはやし立てている」(3日午後、鹿児島市)

軽減税率といえば、その導入に最も熱心だったのは公明党だった。

解散当日の公明新聞でもその実績を大々的に訴え、「国民の8割が賛成。野党は反対」と強調している。

公明党の支持母体である創価学会の支援なくしてはまともに戦えない自民党の現職も少なくない中、党の役員は、選挙直前に友党を刺激しかねない言動は慎むのが「慣習」というものだ。だが、進次郎はまったく空気を読もうとしない。

もとより、小泉家と公明党の距離感は微妙だ。

かつて中選挙区時代に公明党と議席を争った父・純一郎は、過去に公明党関係者から受けた誹謗中傷の数々を昨日のことのように覚えている。その影響もあってか、息子・進次郎は初当選時から公明党の推薦を求めたことがない。これまでも全国遊説で公明陣営に入ることはあっても、候補者の応援に徹し、「公明党」をアピールするようなことはしていない。

「近い将来の連立組み換え、いや、ひょっとしたら自民単独政権への布石ではないか」

そう話す自民党関係者もいる。

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