再び「ニュースの主役」となるか
父子鷹で公明党肝煎りの政策をぶっ壊そうとする様は、解散当日に渋谷の街頭で公明党代表と一緒にマイクを握った安倍のスタンスとは対照的である。しかも、安倍が国民に問うているのは「消費税の使い方」であり、進次郎がしきりに問題としているのは「消費税の集め方」である。
だが、異論を封じ、「排除の論理」を働かせる希望の党が失速する中、進次郎が安倍と違うビジョンを訴えることこそが、寛容な保守層をつなぎとめ、「国民政党」を自負する自民党には有利に働く。それは進次郎自身も意識している。
実際、「第一声」の後に記者たちにつぶやいた。
「自民党は多様な考えを懐に抱える政党ですよ。私みたいに、時に違う意見を言うものを抱えてくれるんだから」(10月1日、東京・練馬区)
じつは解散直前、進次郎は安倍から直接こう告げられていた。
「北朝鮮のミサイル対応もあるので、私も官房長官も防衛大臣も遊説ができないから、小泉さん、よろしく」
これまでも進次郎の自由な発言は、時に安倍政権の趨勢を測る「観測気球」となってきた。彼がいつも通り身内にケンカを仕掛けてくるのは、安倍も織り込み済みだろう。単なる「安倍隠し」という姑息な安全策ではない。むしろ、進次郎と言うアンファンテリブルを全国に解き放つことで、聴衆の反応から得られる「ビッグデータ」のほうが選挙戦略や今後の政権運営に生きてくるのだ。
自民党本部の一角には、「小泉進次郎遊説チーム」がすでに立ち上がっている。これまで党本部職員の精鋭3人を中心に全国遊説がプロデュースされてきたが、今回は警備もスタッフも増強されるだろう。12日間の選挙戦では60~70カ所に入るのが物理的に限界のところ、今回は2012年に安倍がマークした〈88カ所入り〉に挑むことになりそうだ。

果たして、小泉進次郎は、国民からの失望を買った安倍の代わりとして、小池百合子から「ニュースの主役」の座を奪えるか。
12日間の全国行脚がいよいよはじまる。筆者にとっても、通算6度目となる密着取材がはじまろうとしている。
(文中敬称略)