1回の「和牛を食べる会」に20人の友達を呼んで、それを月に1回開催する。1年やれば、240人に来てもらえることになる。いわば、240人の潜在顧客(であり、経営参画者)を獲得できる。

その240人が、店がオープンした後に10人連れて来てくれれば、2,400人。ここで全員とFacebook友達になり、それをFacebookページでグループにしておけば、店の存在を忘れられることはない。この時点で、「友達の罠」から抜け出しているのだ。
(ちなみに、Facebookでグループを作っておけば、店の予約がドタキャンされた時にグループ内で「今日、空いてます」とアナウンスすることができる。コアな客であれば、その投稿を見て、店に駆けつけてくれることはよくある。こういうコミュニティづくりのためのツールは工夫していく必要がある。)
人のふんどしで相撲をとる
次に説きたいのは、初期コストをどう抑えるか、という問題へのひとつのアプローチだ。たいていの人が、一度もやったことのない飲食店経営をいきなりはじめることになる。だから、四苦八苦する。「弟子入りでもしない限り、いきなりオープンするしかないんだから仕方ない」というなかれ。
他人の店を使えばいいのだ。
そう、誰かの飲食店を「プレマーケティング」に使うというのも、一つの有効な手段だ。例えばあなたがカレー屋を開きたいと思ったとしよう。神楽坂あたりに突然カレー屋を開けば、すぐに失敗するだろう。客層も分からなければ、競合店も分からない。なにより、家賃が高い。すぐに家賃に圧迫され、店をたたむことになる。
根底にある原因は分かっている。いきなり「フルタイム」でやろうとするから、失敗するのだ。
例えば、神楽坂にはバーがたくさんある。が、バーが始まるのは早くても夜の7時から。だから、昼間営業しない時間帯に限定してこのバーを借りればいい。
間借りしたバーで昼の11時から17時までカレーを提供すれば、設備投資を行わなくて済む。賃料もフルタイムで借りるよりは安くつく。ここで客層を読み、常連をつかまえ、開店費用を積み立てて、満を持して店をオープンする。これは、リスクを低減した賢い方法である。実際、カレー激戦区の大阪ではこういう「スタートアップ」が流行っている。
また、時間帯がかぶらない業態同士で組み、朝、昼、夜、深夜で、違う営業をするというやり方もある、こうすれば、家賃と減価償却(初期投資)をシェアできる。こういう発想をもてば、独りよがりの内装にお金をかけることが愚策であるかが分かるだろう。どんな業態でもユニバーサルに利用できる店づくりを意識した方がよいのだ。
あるいは店を持たずに、宅配から始めるといのもひとつだろう。最近では、UberEATや出前館など、レストランからの宅配行ってくれるサービスも存在するので、いまならそれが可能だ。

自分でマンションにチラシを入れていても、それなりのオーダーは入る。当然、保健所の許可をクリアする必要はあるが、ほとんど設備投資もかからない。ローリスクスタートのメリットは大きい。
いかに設備投資にお金をかけないかを考えることで、投資回収の罠から抜け出せることができるのである。