2017.10.13
# 企業・経営

東芝の上場維持を決めた東証の「不気味な思惑」を読み解く

こんなストーリーが見えてきた
田中 博文 プロフィール

実はこの夏から、東証の判断が少し疑問に思っていた。

市場第一部銘柄から市場第二部銘柄への指定替え:(株)東芝

東証は17/3期決算が開示された直後の8月1日に、既に債務超過になっているとして、形式基準を適用し、市場第二部へ指定替えとしている。17/3期決算はこの10月24日の株主総会で承認して初めて確定するものだ。

確かに、会社法では、「取締役会設置会社で、かつ、会計監査人設置会社」については、取締役会の承認を受けた計算書類が、法令および定款に従い、株式会社の財産および損益の状況を正しく表示しているものとして、法務省令で定める要件に該当する場合には、定時株主総会の承認が不要となる。実際に東芝も、16/3期は決算を決議でなく、報告事項にしている。

しかし、株主総会へ正式な報告さえ行われていない、決算を以って、市場第二部に指定替えするというのも、理不尽そのものであろう。

 

なぜこのタイミングなのか。

今回東芝メモリは、日米韓連合に売却することを決定したが、米ウエスタンデジタル(以下、WD)との係争は続いており、その進捗如何では、来年3月までの売却が出来ないことになり、おそらく2期連続債務超過となるため、形式基準で自動的に上場廃止となる。

本来なら、仮に内部管理体制が改善されていたとしても、形式基準の上場廃止リスクを抱えている中で、このタイミングで特設注意銘柄解除を行うことは、逆に投資家保護の観点からおかしいのではないか。

「大きなストーリー」が見えてきた

今回の一連の東証の判断から透けて見えるものが出てきた。私の見立てはこうだ。

東芝メモリの売却が間に合わない場合、東芝は第四四半期に公募増資を行う。

特設注意銘柄では、公募ファイナンスは出来ない。私は今回の指定解除は、東芝が公募ファイナンスを行うための下地作りだと考えている。

東芝はこの第一四半期の純利益は503億円。今期の業績予想は純利益2300億円である。
業績通りなら、17/3期5529億円の債務超過が、3229億円に改善され、仮に5000億円程度の公募増資が出来れば、東芝メモリの売却が間に合わなくても、上場は維持される。

というよりも、東芝メモリさえ、売却する必要はなくなる。もともと東芝メモリは今後十分に利益を稼げる事業であり、わざわざ売却する理由などない。もちろん日米韓連合に500億円の違約金は払う必要はあるが、そこがボトルネックになるとは考えにくい。引き続き、業績は安泰となる。

もちろん、東証が自分でその絵を書いたとは思わないが、意地でも上場維持したい東芝に対して、大きなヒントを与えたことは間違いないだろう。

もし東芝メモリを売却しないとの判断が出れば、公募増資は十分可能だと思われる。

東芝にしてみれば万々歳だが、東証の今回のこのタイミングでの判断はどうなのか。外から何か圧力がかかったとは思いたくないが、東証はこのストーリーを明らかに予見できる立場である。

この理解し難いタイミングでの特設注意銘柄解除が、東芝の上場維持を「忖度」したものであれば、東証の信頼はこの上なく失墜するだろう。

関連記事