いじめられっ子たちが上村君を殺すまで【川崎中1殺人事件の真相】

なぜ普段は目立たなかった彼らが…
石井 光太 プロフィール

ぬいぐるみを抱いて会話

AとBが出会うのは、Aが高校2年、Bが高校1年の春のことだ。

2人は共通の友人から紹介されたのをきっかけに、つるむようになる。同じフィリピン人の母と日本人の父を持っていること、アニメとゲームが好きなことが意気投合した理由だった。

2人の周りには、ゲームセンターで知り合った同じような家庭環境の少年たちが何人かいた。母子家庭の子や、虐待を受けている子も多かったのだ。みなフリーターか、定時制か通信制の高校へ通っていたため時間を持て余していた。

彼らは連日深夜までつるんで町をブラブラし、アニメやゲームをする金ほしさに、万引きをしたり、寺や神社の賽銭泥棒をしたりしていた。

 

そんな中でグループに加わったのが、少年C(事件当時17歳だった。Aと同じ中学の卒業生。高校でもAと同じクラスになったことから親しくなったのだ。

Cは昔から1匹狼的なところがあり、「キレたら何をしでかすかわからない奴」と言われていた。自分の気に食わないことがあれば、相手が教師であっても飛びかかって暴れる。ただ、不良というより、裁判で発達障害の傾向があると指摘されたように、周りにはあまり理解されないような行動が目立ったらしい。

友人の話である。

「Cはわけわかんないやつだよ。話すときはぬいぐるみを抱いて、それを介して話すんだ。ディズニーのぬいぐるみを抱いて『ねー、何するー』とか『タバコ吸いたいよねー』と言ってきたり。Aなんかはそれに付き合って、一緒にぬぐるみを抱いて話してたね。

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Cがやばい奴っていうのは有名だった。あいつは自分がやりたいと思ったこと以外は絶対に許さないで、邪魔されるとキレて暴れだす。そうなったら手に負えない。だから絶対に彼の意にそぐわないことをしちゃダメって感じだった」

こうしてA、B、Cがつながる。AはCに傾倒して暴力的な言動が目立つようになり、サバイバルナイフを携帯するようになる。しかも、Aは酒癖が極端に悪く、酒を飲むと一気に暴力的な性格になり、友人でも酒屋の店員でも絡んで暴力を振った。Aのグループの仲間たちは、一様に酒の場でAに暴力を振るわれている。

今回の事件のきっかけは、些細な誤解からだった。

被害者の上村遼太君は当時中学1年生。両親は離婚しており、家には5人きょうだいに加えて、母親の恋人が同棲しはじめていた。こうした環境なども影響していたのだろうか、遼太君は先輩たちとつるんで深夜まで家に帰らないようになっていた。

ただ、まだ13歳。不良というより、先輩の真似をして煙草を吸ったり、公園にたまったりするくらいの少年だった。

Aがそんな遼太君と知人を介して知り合ったのは年末のことだった。お互いにアニメとゲームが好きだということで意気投合する。間もなく、Bとも同じ知人を介して親交を深めた。

当時、Aは不登校になっており、Bは高校を中退していた。そうした影響もあったのか、遼太君は周りの真似をするように3学期から中学に行かなくなる。学校の友達より、夜遊びをしている先輩グループの方に居心地の良さを感じてしまったにちがいない。

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