2018.01.08
# 北朝鮮 # 韓国

韓国と北朝鮮の「南北会談」になんの期待も抱けない、歴史的な理由

3月を越えればどうせまた…

危機的状況になんら変わりなし

新年早々、北朝鮮情勢が動いている。1月1日、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長は、新年の辞で、韓国との対話チャネルが開かれているとし、2月の平昌オリンピックについて北朝鮮の選手団を派遣することを示唆した。

これに、韓国の文在寅大統領がすぐに飛びついた。これまで韓国の対話要求に対して北朝鮮は無視してきたが、金正恩氏の歩み寄りとも取れる発言を歓迎。早速、9日の南北高官級会談を北朝鮮に提案した。

一方、アメリカのニッキー・ヘイリー米国連大使は、北朝鮮が完全に非核化するまでは、いかなる話も真剣に受け止めないとして、今後北朝鮮と韓国との会談があってもアメリカ政府が重要視することはないと反応した。アメリカ国務省のナウアート報道官も、「北朝鮮の狙いは米韓分断にあるかもしれない」と警戒した。

 

金正恩氏は新年の辞で、「核のボタンが私の事務室の机の上にいつも置かれている」と述べており、対話路線とも取れる発言の一方で、アメリカには強硬姿勢を崩してはいない。

ただし、アメリカは、平昌オリンピック開催中の2月9日から25日までの間とその直後、そしてパラリンピックの期間中3月9日から18日までの間、米韓合同軍事演習を実施しないとし、韓国と北朝鮮の交渉を見守る姿勢を見せた。

それを受けて、5日、北朝鮮は韓国が提案していた南北高官級会談について応じるとの連絡を送ってきた。

以上が、今年に入ってからの米韓朝の動きである。

その背景には、国連の北朝鮮に対する経済制裁が累次に及び行われた結果、制裁決議内容はほぼ限界にまでなっていることが大きく影響しているだろう。この冬にエネルギー関係の対外取引を制限されるのは、北朝鮮にとっても痛いところだ。

昨年だけでも、

国連安保理決議第2356号(2017年6月2日 http://www.un.org/en/ga/search/view_doc.asp?symbol=S/RES/2356%282017%29)、

国連安保理決議第2371号(2017年8月5日 http://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=S/RES/2371%282017%29)、

国連安保理決議第2375号(2017年9月11日 https://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=S/RES/2375%282017%29)、

国連安保理決議第2397号(2017年12月22日 https://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=S/RES/2397%282017%29

とかなり実効的な措置が採られており、国連内からもこのままでは北朝鮮経済は壊滅的になるという見方もでている。たとえて言うと、クビを絞めているが、ほんの少し力をぬいている状態とはいえ、長時間になれば窒息死する程度である。

【PHOTO】iStock

制裁決議に反する闇の取引は依然行われているが、アメリカは、制裁決議に反する取引を規制するために、半軍事行動ともいえる「臨検」実施の可能性もちらつかせている。現在では国連憲章第7章41条(主として経済制裁)の実効性を高めるために、臨検が認められているとはいえ、戦時下では「軍事活動」ともされる行為である。

しかも、昨年12月末のクリスマス休暇で、在韓米軍の家族は一時アメリカに帰国している人も少なくない。そのまま、アメリカに滞在して韓国に戻らなければ、アメリは比較的容易に軍事オプションを行使できうる状態になっている。

そうした状況に対して、金正恩氏がついに反応せざるをえなかったのだろう。金正恩氏の言葉は威勢がいいが、ミサイル実験では、間違ってもアメリカを刺激しないような範囲に撃ってきている。この点から、かなりアメリカを配慮しているのは、北朝鮮問題の専門家では周知の事実である。

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