日本法人ではなくただの「現地倉庫」!?
アマゾンは日本に税金を払っていない――。パナマ文書やパラダイス文書が公表され、世界の大企業や資産家の多くが租税回避にいそしんでいることが明らかになった現代、アマゾンも「節税のプロ」と世界中から揶揄されるようになった。
実際のところはどうなのか、国税とアマゾンの課税をめぐる「仁義なき戦い」を見ていきたい。
日本の税制は、基本的に住民や企業の「恒久的施設」に対して課税するシステムになっている。法人税であれば、課税対象の法人の活動拠点が日本にあるかどうかが判断の基準になる。
そのため、現行の制度では外国の法人が直接日本国内でビジネスを行った場合、日本への納税義務はないという抜け穴が存在する。

そしてアマゾンは、この恒久的施設の理屈から、日本に税金を納める必要がないと主張してきた。東京財団上席研究員の森信茂樹氏はその経緯を次のように解説する。
「これまでアマゾンは、日本法人に関しては『倉庫および物流施設のひとつで、日本に拠点を置いて事業を行っているわけではない』としてきました。
あくまでアマゾンはネット上に存在している実体のない店舗で、日本にある施設はただの倉庫だから、日本に法人税を納める必要はないという理屈でした。
そして日本での取引で得た売り上げには消費税がかかるはずですが、これについても一部の商品に関しては『サーバーや決済装置が海外にある』という理由で、日本に支払わなくてもよい、としてきたのです」
日本での事業にかかる法人税がアマゾン本社のあるアメリカで課税されているとすれば、日本よりも税率は安く、節税になる。
また消費税に関しても、アマゾンのクレジットカード決済センターはアイルランドにあるため、国内で決済しても「海外での購入」との扱いになり、消費税の課税対象にはならないとしていた。
莫大な利益を上げながら、しかるべき税金を納めない「タダ乗り」状態。だが、あくまでアマゾンのやり方は合法。脱税ではないため、日本の国税当局もそう簡単に取り締まることはできず、歯がゆい思いをしてきた。
実際のところ、アマゾンが1円も法人税を納めていないかどうか、その真相はブラックボックスになっている。
'09年、日本の国税当局はアマゾンに対して約140億円の追徴課税を行ったことがあったが、アマゾンは「日米の当局間で協議して決めてほしい」と日本の国税を相手にしなかった。
結局日本側の主張は米国当局に認められず、またその件に係わる資料も公表されていない。
ただ、だからと言って日本の国税も引き下がるわけにはいかない。'15年10月に「インターネット上のデータ取引であっても、日本で営業活動を行っている企業団体に関しては的確に徴税していく」と、引き続き対抗する姿勢を示したのだ。
この結果、'15年10月からアマゾンで課税されてこなかった商品にも消費税が課税されることが決定した。
このとき焦点となったのが、海外サーバーから配信される電子書籍の売り上げが日本で課税できるかどうかだった。結果として、これもアマゾン側に課税を認めさせることに成功したのだ。
アマゾンというインターネットショッピングサイトは、日本に法人としての実体を持っているのかどうか――。法人税を課税するうえでの最大のポイントは、'16年4月に大きな転換点を迎えた。