●動脈硬化を防ぐ
同チームの研究によれば、納豆を食べることによって、脳梗塞だけではなく、循環器疾患「全般」のリスクも下がった。
これは、納豆が動脈硬化を防ぐ力を持っているからだ。
須見氏が続ける。
「納豆に含まれる『レシチン』という物質は、血液をドロドロにして動脈硬化を引き起こすLDLコレステロールや中性脂肪を除去する力があるのです」
血糖値の上昇を抑える
NTTデータや佐賀県有田町などが共同で行った研究ではその効果が如実に現れている。
男女52人に、4週間1日30g(1パック相当)の納豆を食べさせ続けた結果、コレステロール値が高いグループ、中性脂肪血が高いグループでは、それぞれの数値が10%以上も低下していたことが明らかになった。
「さらに『リノール酸』や『リノレン酸』は、血管を強く、しなやかに保つ力を持っています。血管を健康に保つ効果は非常に大きいのです」(須見氏)
最新の研究では、納豆には、動脈硬化の主要な原因となる「肥満」を改善する効果があることも分かってきている。東京都立食品技術センター主任研究員の細井知弘氏はこう語る。
「血液中には『AIM』というタンパク質があり、これが少ないと人間は肥満になりやすい。しかし、納豆を摂取することで、このAIMの濃度を適切に調節できる可能性があるのです」
●糖尿病を予防
厚生労働省の調査によれば、いま日本には「糖尿病が強く疑われる者」が、約1000万人いると推計されている。
そんななか納豆は、糖尿病を予防する力を持っているとして注目を浴びている。
前出の須見氏が解説する。
「糖尿病は、血糖値の急激な上昇と低下が繰り返されることによって発症しますが、納豆にふんだんに含まれる食物繊維やビタミンB2には、糖質と一緒に摂取した際に血糖値の上昇を抑える効果があるのです。
また、レシチンは、糖質の吸収を促すインスリンを分泌させる力を持っています」
●認知症の予防
さらに、こうした血糖値の「急激な上昇」は、認知症につながることも分かっている。食後高血糖が続くことで産出される有害物が脳細胞にダメージを与えるのだ。それゆえ納豆は、認知症の予防につながると考えられている。
認知症については、納豆に含まれるほかの物質の効果も見逃してはならない。
「納豆には、神経伝達物質(アセチルコリン)を合成するレシチンや、伝達物質そのものであるアスパラギン酸、脳の活性物質として知られる不飽和脂肪酸などが含まれています。これらは記憶力を高める効果があるのです」(須見氏)

●骨折を予防
納豆が持つ力のなかで、意外に知られていないのが、骨を強くする効果だ。全国納豆協同組合連合会の緒方則行氏が解説する。
「納豆に含まれるビタミンK2は、骨の形成を促進する性質を持っており、骨粗鬆症を予防する効果があります。ジャコやシラスなどカルシウムをたくさん含む食品と一緒に食べるといっそう効果的です」
40代以上の男女の大腿骨骨折者の割合を都道府県別に調べたデータがあるが、それを見ると明らかに「西高東低」。とくに関西圏の骨折者の割合が高くなっていることが分かる。
これはもともと、関西では、納豆を食べる文化がなかったことの影響だとする専門家もおり、日本ビタミン学会の報告によれば、納豆の消費量が多い都道府県ほど、骨折の割合が低いという。