みずほFG「異例の新社長人事」は覚悟の表れか、それとも…
あえて違った見方をするならばみずほフィナンシャルグループ(FG)は1月15日、みずほ証券社長の坂井辰史氏を新社長に抜擢する人事を発表した。4月1日に就任する。2000年の旧みずほホールディングス誕生以来、証券子会社社長からのグループトップへの起用は初のケースとなる。
「脱・銀行依存」によって、3大メガバンク最下位の座の返上を目指す覚悟を明確にした人事と高く評価する論調が、マスメディアをにぎわせている。そういう面があることは事実だろうが、そうした評価がすべてとみなすのはやや短絡的だ。本稿では、関係者の間にまったく違った見方があることを紹介したい。
三菱UFJ、三井住友との差が開いて…
過去数年、日本ではどの銀行も歴史的な苦境に置かれている。日銀のマイナス金利政策やITと金融の融合(フィンテック)が収益を直撃しており、このまま従来型の経営に拘泥して何も手を打たない銀行があるとすれば、今後数年以内に最終赤字に陥る可能性も十分考えられる。
そうした状況のもとにあっても、みずほFGは依然として日本有数の大手銀行の一つだ。中堅の地方銀行とは比較にならないほど分厚い資産を蓄積している、盤石な銀行と言っていいだろう。
だが、3大メガバンクというカテゴリーのなかで見ると、風景はまったく違ってくる。
かつて都市銀行13行や長期信用銀行3行が日本の経済社会に君臨した時代に、さまざまな経営指標のトップに名を連ねた富士銀行、第一勧業銀行、日本興業銀行の3行が経営統合して誕生した経緯があるにもかかわらず、現在の収益はメガバンク中最下位に甘んじている。

今年度上半期(2017年4~9月期)の純利益を比べてみても、三菱UFJフィナンシャルグループが6269億円、三井住友フィナンシャルグループが4201億円を稼ぎ出したのに対し、みずほFGは3166億円と後塵を拝している。
トラブルの多さも目につく。2002年と2011年の2度にわたり大規模なシステムトラブルを引き起こした。2013年には反社会的勢力との取り引きが長年放置されていたことが明るみに出る不祥事もあった。
大手信販オリエント・コーポレーションを通じ、みずほ銀行が暴力団の構成員に対して230件、約2億円の融資をした事実を2010年に把握しながら、資金回収や契約解消をせずに放置したというものだった。トップへの報告が8回もあったのに、発覚後の記者会見で「報告が常務止まりで対応が遅れた」というでたらめの釈明を行い、事態が大きくなった。
本連載でも、2013年10月に「反社会的勢力と取引を繰り返す 懲りないみずほ銀行の4つの構造問題」で取り上げた。みずほFGは2011年のシステムトラブルに続いて、この不祥事でも金融庁から業務改善命令を受けている。