「女子教育」には理由がある
私が勤める品川女子学院は、一時期は1学年5人の新入生しかいなかった時代もありましたが、改革を進めた結果、数年後には入学願書がのべ1800名出るようにまでなっていました。
「今どき、改革をするのならなぜ共学にしなかったのか」と聞かれることがあります。確かに、改革の上で、女子校を共学に変え、成功した例はいくつもあります。
私立の女子校経営は非常に厳しいのが現実です。首都圏の私立中高は、男子校に比べて圧倒的に女子校が多く、共学もあります。女子の進学先は受験生の数に対して供給過多になっているのです。
また、私自身は共学校に通っていたので、共学ならではの良さもわかっていました。
それでも、なぜ女子校にこだわったのか。
従来言われてきた女子校のメリットは、「男女の成長カーブが違う時期に女子に手厚いケアができる」「女子のリーダシップが育つ」等ですが、私達にはその他に女子校であり続ける大きな理由が二つありました。
ひとつは、「卒業生の母校の理念を守りたい」ということ。
もうひとつは、今の日本だからこそ「女子教育が急務」であると確信していたということです。

必要なのは「復職力」
私自身は教員の家庭に生まれ、大学卒業後にすぐ教師となったため、「他の社会を見ていない」というコンプレックスを持っていました。生徒を社会に送り出すためには、自分も社会に視野を広げならないと、常に校外にもアンテナを立て、ネットワークを広げるように努めました。
そのような中で見えてきたのが、「日本は、先進国の中で珍しいくらい女性が活躍していない」という現実でした。
日本には、第一子出産年齢前後で女性の労働力率が下がり、その後復職して折れ線グラフに谷間が出来る「M字カーブ」現象があります。最近、この凹みが浅くなってきたことが報じられていますが、問題は中味です。「一番下の子の年齢別 母の仕事状況」を見ると、子どもの年齢が上がるにつれて働いている率が上がっていても、正規雇用はずっと2割台であることが分かります。

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世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダーギャップ指数では、昨年、日本は世界144カ国中114位と、過去最低を更新してしまいました。
しかし、このような現実を国や職場のせいにしても仕方がありません。出産や育児などでキャリアが中断しても、望めば元の立場に戻れるように、早いうちから準備をし、資格や専門性など「復職力」をつけておきたい。女子にこそ「未来から逆算した教育」が必要なのです。