2018.02.05
# メディア・マスコミ # 性暴力 # 日本

性犯罪者数百人と面会して見えた「性暴力問題の本質」

良い人が突然変貌するのはなぜ?
藤岡 淳子 プロフィール

今どきの男の子は大変だと思う。

少し前は、「女子は三界に家なし」と言われ、「娘としては父に従い、嫁しては夫に従い、老いては子(息子)に従う」というわけで、自由とは遠い生き方をせざるを得なかったが、現代では、女子の方が自由であるように感じる。

家庭によって異なるのではあろうが、子ども時代、少年時代から、男子にはより両親の期待とプレッシャーがかかるように思う。

というか、期待される「良い息子」は、「べき」で自分を律せざるを得ず、性衝動や攻撃衝動などというものは、ないかのように振る舞わらざるを得ない。

それでいて、仲間関係においては、そんな「良い子」をしていては浮いてしまうし、女子にももてない。

男友達の間で学業やスポーツの成果をあげるとともに、仲間関係を作り、異性ともつながって、親から自立していくというのは、なかなか困難を伴うだろう。

そこにスマホなどで簡単に性的刺激が入手でき、しかも性行為は男性性を強調できるとなれば、相手のことなどおかまいなく、性暴力に至る。彼らは、友達にも、親にも、自分の恥ずべき「したい」を話すことが難しい。

 

性暴力を行う人に対してできること

仕事をして、家庭を持ち、妻子を養うようになれば、十分自立したと言えるのではないかと思うが、そうでもないようだ。

そうした男性が痴漢や盗撮などの性犯罪を行う場合、聞いていて涙ぐましいくらい、職場であるいは家庭で、良い職業人、良い夫(父)であろうとしている。

ただ、残念ながら、会社や家庭からの彼に対する要求は、だんだん彼の手に負えないくらいになってくる。

彼は、「できない」と人に言うくらいなら、自分のストレスを自分よりパワーの弱い人に押し付けることを選ぶのである。

こういう性暴力を行う人たちに、マスターベーションの仕方とか、風俗を使えとか、「性」行動そのものにこだわって彼らの行動をコントロールしようとしても何の役にも立たない。

被害を出さないように、また性暴力行動で一時的に立ったような気になるごまかしを続けさせるのを防ぐためにできることは何か。

性暴力行動をまずは外部からの力によってでもコントロールする必要はあるが、目指すべきは、人間としての力をつけ、立てること、パーソナル・パワー(人間力)を獲得し、それを適切に使いこなすことができるようになることである。

男性も女性もきちんと手を携えて暮らしていければ、私たち一人ひとりの満足感と幸せ感はきっと高まっていくだろう。

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