市川紗椰が「中東問題をどう報じるか」で思い悩み、たどり着いた結論
「現代新書を読んでみる」②モデルの市川紗椰さんが、毎月数冊刊行される講談社現代新書の中から特に読みたい本を一冊を選び、読んでもらう新連載「市川紗椰が現代新書を読んでみる」。
連載第2回目の今回、2018年1月刊は、酒井啓子『9.11後の現代史』・岡崎守恭『自民党秘史』・橋本健二『新・日本の階級社会』・久住真也『王政復古』の計4冊。連載第2回目となる今回、市川紗椰さんが選んだのは『9.11後の現代史』でした。
ユダヤ系の友人に囲まれて育ちました
私は現代史、特に冷戦の歴史が好きなので、今回の4冊の中では『9.11後の現代史』に最も興味が惹かれました。子供のころから、中東で起こっている出来事は身近に感じていたんです。
私がアメリカで育った場所はユダヤ系の方々が多く住んでいるエリアで、学校でも半分以上がユダヤ系でした。イスラエル国籍の子もいるし、宗派の関係で18歳までにイスラエルに行かなければならないという子もいました。
様々な宗教・宗派の子がいましたが、通っていた学校がとてもリベラルな校風だったこともあって、まったく気にならず仲良くしていました。みんな、自分の宗教を言いたがってましたよ。
14歳の頃に日本のインターナショナルスクールに移ってきたのですが、そこではモルモン教の人が多くて、逆にユダヤ系はほとんどいなかった。それで、「ユダヤ系が少ないんだ、めずらしい!」と思ってしまったくらい。振り返ってみて、自分の育った場所が特殊だったことに気付きました。
そして、日本に来て2週間後に9.11テロが起こりました。

日本のインターには外交官の子どもが多くいたので、狙われるかもしれないという危惧から、安全のために学校の周りに高い塀が建てられました。すごく予算がかかるハズなのに、あっという間に学校が塀で囲まれたんです。かなり異常な事態だったので、とても象徴的な出来事として覚えています。
そういう環境で育ってきたこともあって、アメリカが「テロとの戦争」へと突き進んでいく事態に対して「何してるの?」という思いはずっと持っていました。イラク戦争の際に、アメリカ兵が捕虜を虐待しているというニュースを聞いた時は、とても胸が痛みました。
「宗派対立」では中東を理解できない
この本は章構成が時系列になってなくて、「なぜ中東はこのような事態になってしまったのか?」という疑問に答えるために現代から過去に歴史をさかのぼっていく形式になっています。それがとても新鮮で、面白かったです。
複雑な事態も、原因を求めていく解説の仕方だと把握しやすいですね。歴史の授業もこういう感じでさかのぼって教えてくれたらわかりやすいのに、と思いました。