カーリングの世界を変えた、男子選手たちの神すぎる「取材対応」

他のスポーツではあり得ない!
竹田 聡一郎 プロフィール

選手が記者を育ててくれた

巡り合わせもあるだろう。この頃から担当に配属された記者は、悪いことではないので具体的に社名を出してしまうが、読売、朝日、毎日、共同、時事、それにSC軽井沢クラブの取材を続ける地元紙・信濃毎日、それぞれのカーリング担当はしっかりと予習をしてから現場に来る誠実な方が多く、みな貪欲だった。

彼らも不肖竹田と同様に、女子の試合を男子選手と共に観戦し、各エンドの基本的なセオリーから、ドローショットの秒数、世界のカーリング事情まで質問攻めにした。男子選手も自分やチームの名前が出なくとも、快く対応してくれた。

選手が記者を育ててくれたのだ。

 

中には、口をすべらせて書かれてはまずいことを漏らしてしまう選手もいたが、それを書かないこと、あるいは一部を伏せて書くことで、記者との間に信頼関係も築かれた。

そうなると、今度は、記者たちがお世話になった男子選手の露出を増やすべく、男子のゲームも熱心に観戦するようになる。恩返しの意味合いもあるだろうが、それ以上に、多くの記者はパワフルな攻防一体の男子カーリングに魅せられた。

記者の観戦レベルが上がった結果、試合後の囲み取材で飛ぶ質問の多くは核心に迫ったものとなった。なぜかカーリング協会は常に会見や取材時間を短く設定しがちだが、その限られた時間の中で効果的な取材ができるようになってきた。

「カー娘」時代には「バレンタインですが、チョコは誰に?」といった周囲のエアーを全く気にしない記者もいたが、いつの間にか淘汰されていった。カーリング競技の周辺は、男子の躍進よってヴァラエティ色が薄まり、やっとスポーツの現場になってきた。

ただ、そのぶん、男女共にみっちりと取材観戦をしなくてはならない。五輪は1日3試合が行われる。日本選手権は男女合わせて一日に4試合だ。それでも、「眠い。腹が減った」とボヤきながら記者は全試合を真摯に取材を続けていると、相変わらず人懐っこい男子選手が、時々、記者席に遊びに来てくれる。我々の質問に答え、解説を加えてくれる。

カーリングはまだマイナースポーツではあるけれど、マイナースポーツで良かったと思えるのはこういうときだ。男子のサッカー日本代表が、なでしこジャパンの試合を一緒に観ながら解説してくれる機会なんて絶対にない。

平昌五輪出場決定直後から、男子代表への取材も加速度的に増えた

男子選手の神対応を胸に、各社記者は今日も江陵カーリングホールに朝から晩まで詰めている。

集中して最大3試合を観戦し、試合と試合の間には原稿を書かなければならない。平昌のオリンピックパークは飲食物持ち込み禁止なので、メディアセンターに用意されているクッキーとコーヒーで飢えをしのいでいるらしい。

冒頭の朝日新聞だけでなく、読売新聞はカーリングの聖地「常呂町」の歴史を紐解いた。毎日新聞はスキップだけでなく全選手の談話を超速報で流した。共同通信はミックスダブルス全試合を取材し新種目を広く報じた。

引き続き、各媒体がそれぞれの切り口で、カーリングの面白さや、そこに秘められた魅力や物語を周知させてくれるだろう。その裏には、男子選手がまだ人気がなくとも、五輪に出られていなくとも、いつでも気さくに記者に話をしてくれた男子カーラーの存在があったことを知ってもらえれば、取材者の端くれとして望外の喜びだ。

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