2018.03.13
自動運転がもたらす無事故社会に怯える「ある業界」の焦り
頑丈な素材はいらなくなるので…「クルマのボディは紙で十分になる」
第四次産業革命は素材産業にどんな変化をもたらすのだろうか。
自動車メーカーやアナリストのあいだで、「人工知能(AI)とモノのインターネット(IoT)を使った自動運転によって、交通事故がなくなる時代が到来すると、クルマのボディには頑丈な鋼板がいらなくなる。極端な話、紙に取って代わられてもおかしくない」といった予測が静かに広がるなか、当の鉄鋼メーカーが新たな時代へ向けた生き残り策を模索し始めた。
アメリカのトランプ大統領は8日、貿易戦争の引き金になりかねないと厳しい批判を浴びたにもかかわらず、安全保障上の脅威を理由に、鉄鋼とアルミニウムの輸入を制限する大統領令に署名を強行した。このことからもわかるように、自国の鉄鋼メーカーの保護は大国にとっていまだに大きな関心事だ。
第一次産業革命以降の歴史をふり返ると、粗鋼生産量1位の地位は経済大国の証しで、これまでイギリス、ドイツ、アメリカ、日本、中国と受け継がれてきた。「鉄は国家なり」「鉄は産業のコメ」と言われるように、鉄鋼業はいまなお国家経済をけん引するリーディング・インダストリーであり、サプライチェーンの根幹に位置する素材産業と言っても過言ではない。
そうしたなかで押し寄せてきた第四次産業革命のイノベーションの波は、鉄鋼業にどんな変身を迫るのか。国内最大手の新日鐵住金が2日に公表した「中期経営計画」を丁寧に読むと、実情が見えてくる。