日本の最難関大学、東大。そこで教授になるには、運、才能、努力、様々なものが必要とされる。しかし、教授になれても安心はできない。そこでは、さらなる競争と選抜が待っている。
同じ高校の出身者を教授が推薦
「東京大学の医学部に小川誠司さんという特任准教授(有期雇用)がいました。遺伝学が専門で抜群の実力があったのですが、東大の中では評価されず、結局、'13年に京都大学に移ってしまい、今そこで一流の学会誌に掲載される論文を量産しています。
東大時代の彼の上司たちは、実力がありすぎる彼を嫌ったのではないかと言われます。しかも彼は岡山朝日高校の出身。それが影響している可能性もある」(東京大学医学部の元教授)
東京大学教授――。
日本最高の知性が集まる大学で出世の階段を昇り、確固たるポストを勝ち得た人々である。その数、1171人、平均給与は約1189万円、平均年齢は56.4歳(すべて'16年度)。
東大教授と言えば、世間では「特別な存在」として尊敬の念を集め、好きな研究に没頭できる人々と思われている。しかし実は、偏差値エリートの頂点にたどり着いた後にも、そこには格差や階級が存在し、嫉妬や蔑みといった上下意識が渦巻いている。
もちろん、そのポストにたどり着くまでも茨の道だ。優秀な東大生が学問に励めば自動的に教授になれるわけではない。大学入学前の出自、「出身高校」が大きく関わってくるのだ。
今回本誌は、理系、文系の偏差値トップである医学部と法学部の教授の出身高校を調査した。
まずは医学部。73人の教授が所属しているが、判明した中で最も多いのが灘高校出身者(10人)だった。その後に開成高校(8人)、筑波大学附属駒場高校(筑駒・6人)、筑波大学附属高校(筑附・5人)、麻布高校(5人)などが続く。
そのほかも都立西、駒場東邦、武蔵といった都内の進学校が名前を連ねており、地方の進学校出身者が医学部教授になるのはレアケースだ。
そもそも東大入学時の「医学部進学コース」である東大理Ⅲは、年間100人強しか合格できない狭き門。灘高校から20人前後、筑駒から10人前後が合格するのだから、学生時点で超進学校が大勢を占めている。
しかし、出身高校がどこであるかということが、教授になる際にも影響を持つとすればどうか。前出の元教授が解説する。
「かつての東大医学部は、ボス医師が自分の担当する講座で絶大な人事権、裁量権を握る『講座制』だった。山崎豊子の小説『白い巨塔』の世界です。その弊害を受け、建て前では講座制を廃止しましたが、今もそうした状況から完全に脱し切れたわけではない。
ポストについても、教授会で協議されるとはいえ、一定の条件を満たせば、現役教授が強く推すことで決まる。同じ高校の出身者を推そうとすれば推せるのです。
医学部はそうした側面が、ほかの学部に比べて圧倒的に強い。冒頭にお話しした小川さんの件も、嫉妬に加え、出身高校の論理が働いているかもしれない」