実は競艇は性質上、大量に同じ舟券が買われるとガクっとオッズが下がってしまうので、投資対象としてはそれほど「うまみ」がない。

日にもよりますが、せいぜい1日4~5万円くらい利益があれば上出来、という感じです。それならば、人工知能がどのような結果をもたらすかをより多くの人に身近に感じて欲しい、と思ったのです。

いま、世の中ではシンギュラリティが本当にやってくるかどうかの議論がありますが、僕はその先が見てみたい。

究極的に言えば、「AIに稼がせて自分は仕事をしなくても済む」システムを構築したいし、そういう社会になっていけばいいのにな、と漠然と考えているのが開発の原動力のひとつですね。

AIを自分の手で育てる

リリース前の検証では、1週間くらい実際に舟券を買ってみて、回収率は120%程度に達することができました。とはいっても、試験的に公開をはじめた9月ごろは100%を超えるのもなかなか難しく、試行錯誤の日々でした。

ほとんどのレースで、舟券を買えば買うほど資産が減っていってしまう。これでは「AIに稼がせる」とは程遠いところからスタートしました。

これは競艇そのもののゲーム設定による難しさもあります。ランダムに投票すると期待値はだいたい0.7くらい。1万円入れれば3000円は運営者のものになってしまうのです。

回収率が低い状態からデータの適用を見直したり、複数のプログラムを動かして精度の高いものを見つけたりしていきました。

「みずはのめ」でデータ分析に用いている手法は、結局既存の機械学習の延長線上に過ぎません。Googleのコンピューター囲碁プログラム「AlphaGo」のようにAIが自分で成長するわけではありません。

そのため、精度を上げるには結局人間側のトライ&エラーがある程度必要だったりするのです。それでも、試行錯誤を重ねているうちにかなりの頻度で1日の回収率が100%を超えるようになりました。

以前、競馬の予想をしている人と話しているときに共通の認識として生まれたのが、「予想はある程度できる」ということ。「みずはのめ」に掲載している的中確率は、まだまだ100%ではないにしてもかなりの精度を持っていると思います。

ただ、的中できることと「勝てる」こととはまったく別です。オッズ1.1倍の舟券を10枚当てると100円の利益になりますが、ほかの舟券を2枚外せばマイナスです。

「みずはのめ」でいまユーザーに提供しているのは、各券に関しての予想で、2つ以上の券を組み合わせた購入に関する指数はありません。ここが現状改善したいなと思っているところです。

過去の研究によると、オッズに歪みが生じたとき、何を買ってもプラスになるレースが存在します。

100レースに1レースあるかないかくらいの確率なのですが、たとえばAかBどちらかが勝つとします。Aはオッズが3倍、Bは2倍。ここでAに200円、Bに300円賭けたとすると、どっちが来ても600円勝てて、100円回収できる。

こうした、確実に「勝てる」組み合わせをAIで自動的に見つけられるようになるよう、今後はチャレンジしていきたいと考えています。