いま明かされる「タリスカースパイシーハイボール」誕生秘話
タリスカー・ゴールデンアワー第12回(前編)提供:MHD
今回のタリスカーゴールデンアワーは、場所を変えて横浜にある「横浜燻製工房」の栗生社長を訪れた。驚いたことに100メートル手前からもう、美味そうな燻製の香りが漂ってきた。
「この香りは、多分、レーズンバターですね」と、犬並に鼻がきくボブが急ぎ足になりながら言った。
「シマジさん、燻製したレーズンバターとラガヴーリン16年が最高に合うんですよ」
「ボブはここに何回くらいきたことがあるの?」
「3回くらいですかね。最初にきたときの衝撃は忘れられません。栗生社長に『ボブさん、アナゴは食べられますよね』と言われて食べたんですが、なんとアナゴまで燻製されていたんです。栗生社長はなんでも燻製してしまう燻製オタクです」
「じゃあ、今日はボブを燻製してもらおうか」とタッチャンが言った。
「立木先生、勘弁してください。ぼくには愛する妻と娘がいるんですから」
(構成:島地勝彦、撮影:立木義浩)
* * *
シマジ: 栗生さん、お久しぶりです。こちらが有名な写真家の立木先生です。
栗生: はじめまして。栗生です。わたしのような者で本当に大丈夫ですか。
立木: よろしくね。社長のその燻製されたお顔が絵になります。お任せください。ボブも少し燻製してもらったら、もっと味のある顔になるんじゃない。
ボブ: わたしはこれで満足していますから、どうかいじらないでください。

ヒノ: 栗生社長は燻製をはじめて何年になるんですか。
栗生: かれこれもう30年ぐらいですかねえ。
シマジ: ちなみに、いまおいくつですか。
栗生: 54歳です。
ヒノ: じゃあ、23歳からやっていらっしゃるんですか。
栗生: そうですね。大学生のころからやっています。
一同: えっ、大学生!?
栗生: わたしは子供の頃から魚釣りが大好きで、ニジマスやイワナがたくさん捕れるとそれを燻製にして、酒好きな親父のつまみとして提供していたんです。
シマジ: たしか栗生さんは生まれついての下戸でしたよね。
栗生: はい。食には貪欲ですが、アルコールだけは身体が受け付けないんです。ただし、下戸は下戸でも、酒飲みのツボを理解した下戸です(笑)。

立木: じゃあ、そこの燻製マシーンの前に、3人で並んでくれる。
ボブ: では栗生さんを真ん中にして、シマジさんとわたしで挟むように立ちましょう。
立木: うーん、この背景がいいよ。栗生さんが工場長に見える。
栗生: 一応、わたしは社長でございます(笑)。
立木: 社長、笑顔がいいよ。よーし、3人のカットはこれでOK。
シマジ: 栗生さん、ほくたちはタリスカースパイシーハイボールをここで飲んでもいいですか。
栗生: どうぞ、どうぞ。そこに氷を用意しておきました。燻製もいろいろありますから、つまみながらお話ししましょう。
シマジ: どうもありがとうございます。じゃあ、ボブ、みんなの分を作ってくれる。
ボブ: ボス、承知いたしました。
ヒノ: それではみんなで乾杯しましょう。
一同: スランジバー、ゴブラー!

ヒノ: 今日は是非、栗生社長にスパイシーハイボールの命でもある、ピートで燻した「黒胡椒の燻製」の開発秘話を教えてもらいたいと思って参りました。
栗生: これはですね、いまから6年ぐらい前でしょうか、ウイスキーフェスティバルの会場でMHDの坂本さんにお会いして、「香辛料の燻製って出来ませんか」と聞かれたのがはじまりでした。
「もちろん出来ますよ」と安請け合いして、胡椒、唐辛子、紅茶、お茶、いろんな香辛料を燻製にかけてみたんですが、そのなかでも黒胡椒が大成功だったんです。
シマジ: 最初からスコットランドのピートを輸入して使ったんですか。
栗生: それがまた運命的な出会いだったんです。スコットランド産のピートを輸入している会社がわたしの自宅の近くにたまたまあったんですよ。
その会社を訪ねて相談してみると、「うちも是非、燻材として販売したかったんです。でもピートはこのままですと火もつかないし煙もでないんです。どうすればいいか、栗生さん、考えてもらえませんか」ということになりまして、こちらの工房にピートを持ち込みました。