公立高校から、塾通いも海外留学経験もないままにハーバード大学に現役合格。その後ジュリアード音楽院で学びながらバイオリニストとして活動――嘘のような本当の話を実現させたのは、大分在住の廣津留真理さんの娘のすみれさん。すみれさんの「自ら学ぶ力」を引き出したのは、廣津留さんが200冊もの本を読み、子どもの学びを考えた上で編みだした「家庭学習」だった

その経験をベースにした独自の「ひろつるメソッド」をまとめ、廣津留さんは現在、家庭学習を助けるための英語教室を経営している。また、地元で開催して6年目を迎えるサマースクール「Summer in JAPAN」には、全世界十数ヵ国から子供たちが集い、2014年には経済産業省の「キャリア教育アワード奨励賞」を受賞している。

そのノウハウを凝縮した最新刊『成功する家庭教育』から、家庭で身につく「5つの力」については第1回の記事でお伝えし、その中から効果的な英語学習の方法については前回の記事でお伝えした。今回は、子どもの力を引き出す「家庭学習」の具体的な方法のひとつとして、学習環境を作るための「リビング学習」とは何かを語っていただく。

学習机をリビングに移動、ではない

近頃「リビング学習」という言葉をよく聞くようになりました。戦後数十年、家庭学習とは、個室で子どもが黙って一人でするものでしたが一転、最近では家族が集まるリビングでの学習が注目されるようになっているようです。

でもその実態が、単に学習机をリビングに移動させているだけだとしたら何とももったいないと思います。学習机や勉強机のトレンドとして、リビングに置いても違和感のないデザインのものが売れているそうですが、それでは子どもを監視するために机をリビングに移動させているみたいで抵抗があります。

それに学習机、勉強机といったネーミングも、「勉強しなさい」「学習しなさい」という無言の圧力が漂い、子どもはちっとも楽しくありません。楽しくないと感じるものは長続きしないのです。

家庭教育を成功させるためにまず用意したいもの。それは、リビング(あるいはLDK)の大テーブルです。

我が家のリビングには、2メートル25センチ×85センチほどの大テーブルがあります。娘のすみれは、小さいときからリビングで私とともに家庭学習をしており、眠るとき以外で個室に行くのは、好きな音楽を一人で聴いたり、誰にも見せたくない日記を書いたりするときくらい。それ以外の時間の大半をリビングで過ごしていました。一人で学ぶようになってからも、娘は自分の部屋ではなく、リビングの大テーブルで勉強をするのがつねでした。

「個室でないと集中できない」は幻想

リビングに大きなテーブルを用意するのは、家庭教育のベースは親子のオープンなコミュニケーションだから。狭い個室に子どもを閉じ込めないで、のびのびと広い空間に子どもの居場所を作ってあげれば、親子の会話は毎日自然に生まれます。

個室を与えて一人にしてあげた方が勉強に集中できるというのは幻想です。個室で勉強以外のことに集中していては本末転倒。リビングならお母さんやお父さんがすぐ近くにいるので、好奇心あふれる子どもの疑問や課題にその都度答えてあげられます。ハーバード生の多くも「子どもの頃は何か疑問があると親と話し合い、コミュニケーションのなかで課題を解決することが多かった」と答えています。