不可解、不可解、不可解
南スーダン日報問題では、陸上自衛隊で本当に日報が廃棄されていたのかが最大の焦点となった。防衛省は当初、日報は陸上自衛隊の文書管理規則では「保存期間1年未満、用済み」の扱いとなっており、そのルールに従って全て廃棄して存在しないと説明していた。
結果的に、陸上自衛隊の複数の部署に日報は保管されており、当初の説明は虚偽であったことが明らかになった。この真相究明に、安倍首相はどう関与したのだろうか。
実は、日報問題に関して一番最初に国会で答弁を行ったのは安倍首相である。
防衛省がまだ日報の存在を認めて公表する前の2017年1月24日、衆議院の本会議で共産党の志位和夫議員の代表質問に対する答弁。志位議員は、安倍首相に「日報を廃棄した自衛隊幹部の行為を是とするのか非とするのか、明確な答弁を求めます」と質問。これに対して安倍首相は、次のように答弁した。
「御指摘の日報は、南スーダン派遣施設部隊が、毎日、上級部隊に報告を行うために作成している文書であり、公文書等の管理に関する関係法令及び規則に基づき取り扱っている旨の報告を受けています」
陸上自衛隊による日報の廃棄は、法令や規則に基づいたものだという防衛省の「報告」をうのみにしたような答弁である。先ほども述べたが、本来であれば、質問の事前通告を受けて答弁を作成する段階で、「廃棄してるわけないだろう。すぐに探せ」と指示するのが最高指揮官としての「文民統制」だったと思うが、そうはしなかった。
さらに重大なのは、この時点で既に、陸上自衛隊で日報が保管されていることが確認され、陸上幕僚長にも報告されているのである。にもかかわらず、安倍首相は衆議院の本会議で、陸上自衛隊で日報が廃棄されていることを前提とした、結果的には事実と異なる答弁を行っているのだ。これは文民統制の観点から、極めて深刻な事態である。
昨年7月27日に公表された特別防衛監察の結果報告書によると、陸上自衛隊に日報が保管されている事実は、1月17日に岡部俊哉陸上幕僚長に報告された。その後、1月27日に陸上自衛隊から統合幕僚監部の辰巳昌良総括官(防衛事務官)に伝えられ、辰巳氏はその対応についてすぐに事務方トップの黒江哲朗事務次官に相談したとされている。黒江氏は、日報は統合幕僚監部から見つかったものだけを稲田大臣に報告するよう辰巳氏に指示した。
その結果、2月7日に防衛省が日報の存在を認めて公表して以降、稲田大臣は国会で「陸上自衛隊では日報は規則に基づいて廃棄されていた」という事実とは異なる答弁を繰り返すことになった。しかし、野党は、陸上自衛隊にも日報は保管されているのではないかという当然の疑問を抱いて追及を強めた。具体的には、陸上自衛隊で規則通り廃棄したというなら、廃棄の日時がわかる記録を提出するように求めたのである。
これで防衛省は困ってしまう。なぜなら、私の情報公開請求を受け付けた時点では、陸上自衛隊のネットワーク上にアップされていた日報は廃棄しておらず、実際に廃棄したのは、私に対して「既に廃棄しており不存在」と通知した後だったからだ。また、日報の報告先である中央即応集団司令部の端末も調べたところ、複数の端末に直近まで日報のデータが残っていたことが確認された。
この対応を協議するため、2月15日、防衛省で稲田大臣も出席して幹部会議が開かれた。そこで協議された内容については、フジテレビが昨年7月に議事を記録したメモを独自入手して報じた。
それによれば、陸上自衛隊にも日報が保管されていた事実について、黒江事務次官は「『なかった』と言ってたものがあると説明するのは難しい」と話し、稲田大臣は「いつまでこの件を黙っておくのか」と述べたという。