富裕層の資産を預かる凄腕バンカーに、聞きたいこと全部訊いてみた
どうすればなれる? ホントに儲かる?プライベートバンカーになるには
――(司会:以下同)講演の最中に質問票を回収しました。それでは、さっそく質疑応答に移りたいと思います。では最初の質問。
「A証券の出身、現在はB銀行に在籍しているXと申します(編集部注:質問票上はすべて実名)。私は杉山さんのようなプライベートバンカーになりたいと思っているのですが、だいたい何歳ぐらいまでにプライベートバンクの世界に入らないといけないものでしょうか? ちなみにいま32歳です」
杉山 すばらしいキャリアですね。国内最大手のA証券、そして三大メガバンクのB銀行という、この方ぐらいのキャリアがあれば、プライベートバンクの世界に入るだけならば、さほど難しいことではないでしょう。
日本でもメガバンクなどがプライベートバンキング部門を開設していますし、そうしたところで働きたいのであれば、将来のポテンシャルも考慮されて「アソシエイトダイレクター」といった肩書で採用される可能性は高いと思います。
ただ、この方がシンガポールのような、海外の金融機関でプライベートバンカーとしてやっていきたいのであれば、年齢はそれほど問題ではなく、求められるのは数字だけです。
つまり、この方が今の勤め先で抱えている顧客のうち、富裕層と言える人が何人くらいいて、合計でいくらくらいの資産があるか。また、そのうちの何割くらいが転職先の金融機関に資金を移してくれそうか、などといったことがポイントになります。
これがけっこう大変。最近では、「入社後2年以内に100億円以上の預金を集める」というノルマを入社時に約束させるところが多いようです。目安としては、日本での顧客の資産合計が200億あって、ようやくその半分の100億円を引っ張れるという感じでしょうか。
ちなみに日本と違って、シンガポールでは経営側が従業員を解雇するのはそれほど難しいことではありません。
おそらく入社から半年後に30億円の預金を集められなければ警告を受け、1年後に50億円分に達していなければあっさりクビになるという感じでしょう。おまけに、永住権を持っていない人の場合、失業したら1ヵ月以内に次の仕事を見つけなければ、シンガポールから出ていなかければいけません。
つまり、海外でバンカーとして長くやっていこうとすれば、日本の金融機関にいる時に少なくとも100億円以上、できれば150億円以上のアセットをつくっておく必要がある、ということになると思います。頑張ってください。
リスクのない運用法はない
――杉山さんが証券マンからプライベートバンカーになるまでの経緯はこの本、『プライベートバンカー 驚異の資産運用砲』の第2章に細かく書かれています。本の宣伝っぽくて恐縮ですが(笑)、ぜひ、そちらも参考にしてください。では2番目の質問。
「本書の中に登場する、スギヤマスペシャル(プライベートバンクからの融資、海外の生命保険と海外のファンドを組み合わせた、資産運用スキーム)は、実によく考えられた運用法だと思いましたが、まったくのリスクフリーではないと思います。現実的にはどんなリスクが想定されますか?」
杉山 まず、私たち海外のプライベートバンカーの運用は通常USドル建てなので、当然ながら為替リスクはあります。また、多額の融資を受ける、いわゆるレバレッジを効かせていますから、価格変動のリスクもあります。他の海外の資産運用商品と同様の一般的なリスクはあるということです。
なお、「運用を任せているプライベートバンクが破綻したり、バンカーが急死してしまったりした場合はどうなるのか?」という不安もあるかもしれませんが、日本の証券会社や信託銀行と同様に、プライベートバンクも分別管理(投資家から預かった資産と、金融機関が保有する自社の資産を分けて管理すること)が義務付けられています。したがって、仮にプライベートバンクが破綻しても運用資産は全額保護されます。
私自身のことを言えば、プライベートバンカーの中でもファミリーオフィス(富裕層の一族が所有する事業や資産を管理・運用し、未来の世代に継承するビジネス。プライベートバンクの一形態)に近いスタンスでやっていますので、顧客のお金を運用はしても、私が自分で預かっているわけではありません。
顧客の資金はスイス、モナコ、香港、シンガポールなど世界各地のプライベートバンクに受託してもらっています。これらは格付で言えばどれもAAです。
それぞれのプライベートバンクに日本語が話せ、私のスタンスも共有できている担当者がおり、私が彼らに指示を出しながら運用しています。仮に私に何かあったとしても顧客は引き続き同じ方針の運用ができますし、止めたければそこで一旦やめることもできる、というわけです。