ノンフィクション作家の上原善広さんの新連載が始まります! 実は上原さん、長年に渡り心療内科に通い、大量に服薬していました。しかし一向に症状は改善せず、服薬を続けることに疑問を抱き"減薬・断薬"を決意。本連載ではその一部始終をお届けします。
睡眠薬、抗不安薬、抗精神薬など大量服用
ふと気がついたのは2年前、2016年だった。この時点でもう、かれこれ6年も心療内科に通っていたことに気がついた。
2010年に「双極性障害Ⅱ型」と診断されてから振り返ってみると、睡眠薬、抗不安薬、抗精神薬など大量の薬を飲んできた。取材で出張に出るときは、A4ほどの大きなピルケースを持ち歩き、大量の薬を仕分けして持ち歩いていた。その年に自殺未遂を三度も繰り返していたので、薬を飲まないと危ないと思い込んでいた。
そのため数年間は「病気だから」、「精神障害だから」と納得して飲み続けていたが、長期になるにつれ、次第に疑問に思うようになった。
海外で長期取材していても、朝早くの取材では眠くて仕方がない。当初は疲れているのだろうと思っていたが、眠気が尋常でない。睡眠剤をガッチリ飲んで、8時間ほどぐっすりと寝ているのに眠くてしょうがない。服用している薬は、もうこれ以上、増やすことのできない量にまで達していた。
あまりの眠気から仕事に支障が出ていたし、仕事でも細かな見落とし、単純ミスが明らかに増えた。私は以前のように欝っぽくなることはなかったものの、トラブル続出で、すっかり自信を失くしてしまった。

2010年に自殺未遂をしてから、私は生活を立て直そうと生活の改善に力を入れてきた。
独身生活だと堕落する傾向にあることがわかったので、再婚して家庭をもった。朝方の生活に変えて、睡眠もよくとるように気を付けてきた。郊外に越して、環境も良くしてきた。
それなのに頭がはっきりしない状態が続き、自分でも情けなかった。年賀状を出すことができなくなり、一時は電話もできなくなったため、仕事先との付き合いが激減した。
双極性から統合失調症に診断変更
そうした期間が数年続いた後、はじめて私は、この6年間で何も治っていないということにようやく気がついた。治っていないどころか、逆に状況は悪化し、後退していることは確実だった。
それをはっきりと自覚するきっかけとなったのは、主治医に相談しているときだった。私が「いつも眠いし、細かなミスを連発してしまう」などと相談していると、「多分、統合失調症だと思う」と言われたのだ。
つまり突然、診断が変わったのである。
それまでの私は双極性Ⅱ型(躁鬱病)という診断で、それに沿ってさまざまな薬を飲んできたのだが、統合失調症だとまた話が変わる。
おそらく双極性、統合失調のどちらにも効くと言われる薬を飲むことが多いので、主治医は私の愁訴に合わせて診断を変えたのだろうが、これにはさすがに違和感だけが残った。