さて、かかった費用の総額は…
退院日がやってきた。エスコートナースのMさんはとてつもなく優秀な日本人女性で、「私は金銭面のほうには一切タッチしていないので、わからないんですが…」といいつつ、医療搬送事情を教えていただいた。機会があったらもっと詳しく書きたいと思う。
さて、うるさいようだが、カネである。おそるおそる計算書を覗き込んだ。
救急車代 300ドル
エアーズロック診療所の診察費 1350ドル
アリススプリングス病院(以下同)ER代金 858ドル
6日間の入院病床代金 9516ドル
手術代 1249ドル
医薬品代 3384ドル
X線検査代金 404ドル
計17061ドル(約158万円)
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帰国便費用(当人チケット代) 4240ドル
ドクターヘリ(後日請求) 1万ドル前後
ドクターヘリの料金は、仮に1万ドルとして計算しておこう。総計は3万1301ドル。290万1602円!
この時ほど、がんばれニッポンと思ったことはない。円高基調よ、続いてくれ。
入院費用「1日90万円」のこともある
「救援者費用」の合計のほうは後日連絡とのことだったが、おおむね、エスコートナース日当と渡航費用、羽田から自宅までの輸送費 で約200万円ということで、400万円の保険でカバー可能だった。
骨折のニュースを知った友人から続々とメールがきた。
「入院が短くてすんだのは不幸中の幸いです。私の知人は東欧圏で肺炎にかかり、1ヵ月入院。そのときの入院費は1日90万円でした」
2700万円!? …そうだ、私だって創外手術だったら1ヵ月入院の予定だったのだ。まさしく不幸中の幸いだ。また、加入している社会保険および自治体の海外療養費制度を確認しておくといいですよ、というメールもあった。
これらは海外で療養した期間の医療費を一部負担してくれる制度だが、これはあくまでも世界標準からかけ離れて安い日本の医療費の範疇に従うものなので、日本の常識的な額での算定しかしてくれない。
さらに社会保険の担当者にこう言われた。「日本ではドクターヘリは無料なので、つまり出ません」。
……出ないの?! 一銭も? 法外な額を要求されるから助けてほしいのに、日本で怪我してたらこれぐらいですね、という額しか受け取れないとは。まぁ、自己責任であることはたしかなので、ワガママをいう筋合いはない。
車椅子で外に出た。なんて爽やかで気持ちいい空気だろう。
やっぱり旅はいいな。と足のことを一瞬忘れて思った。
ある統計で、海外旅行中に入院する確率は2万5000分の1、とあった。日本の年末ジャンボ宝くじの1等当選確率が2000万分の1と言われているそうなので、それよりははるかに遭遇する確率は高い。せっかくなので書き記しておけば、いつか読者の皆さんのお役に立てるかも、と思った次第です。