武田薬品「7兆円買収」外国人社長だからできる大バクチの勝算

なんだか怖い…!
週刊現代 プロフィール

八方ふさがりの中で

たしかに、「武田薬品は、昔から『買った後が下手』と言われてきた」(経営コンサルタントの中沢光昭氏)。生活が懸かっている社員たちが不安を抱くのも当然だ。

しかし、社員に「では、買収以外の方法で、どうやって活路を見出すのか」と問うと、そろって口をつぐむ。

多くの人が指摘する通り、この買収がリスクの高いものであることは間違いない。そして、それを誰よりも理解し、苦悩しているのが、決断を下し、責任を取る張本人、つまりウェバー氏であることもまた事実だろう。

今年1月、ウェバー氏は、「我々のモデルは企業買収よりも『提携』だ。適正な価格で買収できる企業が見つかるのは稀だ」と述べている。買収のリスクを知っているからこその慎重な発言だ。それでもウェバー氏は今回、買収を選ばざるを得なかった。

悩んだ挙げ句に7兆円を使う「決断」をしたのである。

 

「会社が八方ふさがりの中、『とにかく何かしなくてはならない』という思いがあったのではないでしょうか」と語るのは、バイオベンチャー医化学創薬の社長を務める伊藤勝彦氏だ。

武田の現状が、何もしなければジリ貧であることは、多くの識者が口をそろえるところだ。

「武田は近年、有力な新薬を作れていません。もともと同社は、高血圧の治療薬『ブロプレス』など、基礎研究から始めたオリジナルな薬が売りでしたが、そうした薬の特許が切れ、利益を出しにくくなった。それを見越して新薬の開発をしていましたが、うまくいかない。

'07年には糖尿病薬を申請しましたが、FDA(米国食品医薬品局)から、承認にあたって副作用を調べるよう指示され、その間に他社に利益をさらわれた。'13年には期待の自社創製品が副作用で開発中止となる不運もあった。

こうして'06年3月期には約3132億円あった純利益は、'17年には売上高が4割強も増加しているにもかかわらず、1149億円にまで落ち込んでいます」(伊藤氏)

新薬の開発不調を受け、武田は路線転換を図ってきたが、それが、「自転車操業」状態を生み出すことになった。

「この20年で製薬のトレンドは、『低分子薬』から『バイオ医薬』に変わりましたが、武田は方向転換に出遅れ、自前でバイオ医薬を研究開発する環境を作れなかった。

そこで、自前での研究開発を縮小し、買収によって新薬を得る方向を目指したのです。しかし、そこでも出遅れ、優良なベンチャーはあらかた買われてしまっていた。

自前主義を諦めた以上、すでに有力な薬を持つ大規模な企業を買収しなければならない。しかも、その薬も数年で特許が切れるから、買収を繰り返さざるを得ない。そういう構造になっているのです」(前出・佐藤氏)

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この「脱・自前主義」や研究者の削減について、かつての武田を知るOBや関係者は「さびしい」と言うが、ウェバー氏も薬学の博士号を持っており、研究の現場を訪れるのが好きだという。ただ、社長として会社の命運を握る以上、冷酷にならざるを得ない。

さらに言えば、研究開発を行うためにも買収が必要だ。現在、開発の柱となっている、がんなどの新薬開発は難易度が高く、莫大な費用が掛かる。

「新薬を開発していく規模、体力を得るためにも、なんとかグローバルのトップ10に入りたいという意思があると思います。

現在、武田はグローバルランキング18位。これでは世界と伍していけないという危機感があるのでしょう」(法政大学大学院教授の真壁昭夫氏)

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