当事者の輪に入るためには
では、自分が“当事者の輪”に入るには、もしくは社員を“当事者の輪”に入れるには何が必要なのか?
その答えを考えるために、以下のケースを考えてみていただきたい(このケースは私が行う研修でよく使用しているものである)。
ここでは、冒頭のような会話の課題を一例に考えてみよう。例えば、「会社に活気がない」という課題があったとすると、あなたは、誰にどれだけの責任があると考えるだろうか。

「その課題は他の誰かの責任」と無意識に考えているBさんは、当然、役員、リーダー、スタッフなど他者の責任の割合を高くする傾向がある。さすがにこのエッジが効いた質問で自分の責任を0%とは書かないが、記入する割合はさほど大きくないことが、私が実施した経験からはっきりしている。
一方、この課題を自分のこととして捉えられるAさんはどうだろう。自分にできることは何かと考え、自分の責任の割合も高く記入するし、実際、何かしら行動にも移しているだろう。
例えば「せめて朝の挨拶を率先して元気よくして、少しでも会社の空気を良くしよう」とか「チームでランチに行ったときに、社内のコミュニケーションをよくするため、皆んなで何かできないが話し合ってみよう」などと思うのではないか。
おわかりになっていただいたと思うが、先ほどの“当事者意識の輪”に入るために必要なことは、課題を指摘することでなく、あらゆる課題に対して、自分のすべきこと、できることにフォーカスすることである。
他責にしない=当事者意識100%というマインドで、多少でもいいので、できることを考え、行動することが、自分の成長の可能性を広げることであり、そういう社員が増えればその総和である会社組織も成長する。
幹部やリーダーから意識を変えよ
しかしながら、この他責に一切しないという考え方には違和感や反論のある方がいることも承知している。
「会社で社員は役割を持って仕事をしているのであり、全てに責任を持つことは不可能だ」「全ての責任をとったら、損をしてしまう」「経営側の詭弁ではないか」等、私の研修でも、最初こう言った意見が必ず出る。しかし、研修の最後では多くの方が、私が伝えたい論点や本質を理解していただけている。
残念ながら、今回この部分に関して全てをお伝えすることは難しい(ウェブメディアであっても字数の限度がある)。この自責と他責、当事者意識100%については、拙著『成長マインドセット』に詳しく書いているので、そちらをお読みいただければ理解は深まると思う。
自分が“当事者の輪”に入るには、もしくは社員を“当事者の輪”に入れるには、前述した「課題に対して、できることやすべきことにフォーカスする」という本質を理解して行動する(させる)ことが重要であるが、このことを組織に定着させるためにもう一つ重要なことがある。
それは、経営幹部やリーダーが、率先して、この思考と行動を実践することである。幹部やリーダーがまず、主語のない会話を使わずにあらゆる組織課題に対して、当事者意識のパーセントを限りなく100%に近づけることが必要だ。
当事者意識50%のリーダーが30%の部下に「もっと当事者意識を持ちなさい」と言ってもさほど説得力はないし、組織に変化が起こることもない。