現代ビジネスの好評連載を書籍化した『されど愛しきお妻様』、おがけさまで4刷重版達成しました! 読者の皆様やメディアからも好評なのですが、正直、著者や編集部としては「奇跡の夫婦の物語」と捉えられてしまったことが残念です……。と同時に、もっと実践的な内容も盛り込めばよかった、と反省。というわけで、どんな「すれちがい」のあるご家庭にも応用可能な超・実践的スピンオフ連載が始まります!
遅刻や忘れ物は「僕にも原因があった」
朝いちばんから所用のあるお妻様を助手席に乗せて、渋滞も始まる前の早朝の道を快調に走る。助手席から聞こえるお妻様の「あ」の声に、(来やがったな)と思う。
「なに忘れたの?」
「あー、スマホ忘れたわー。今日のあたしはスーパー駄目駄目だ」
インパネの時計を見れば、お妻様が出かける準備を終えて車に乗り込んだ時点で、あらかじめ伝えていた「予定に間に合う出発時間」を10分過ぎていたし、ここから自宅に戻って再出発すれば時間のロスは30分。つまり目的地にたどり着くのは予定の40分遅れということになる。
「オーケー、じゃあ1回家に戻りまーす」
適当な道に車を突っ込んで展開する僕に、お妻様は不審な表情で問い返す。
「戻るんか!?」
「だってスマホなかったら、1日色々困んだろ? 別行動もしづらくなるし」
「ごめん……。じゃー戻ってくれる?」
「謝んなくていいよ。俺も悪いから」
「え?」

お妻様、まだ「この環境」に慣れないのも、仕方がない。なぜなら急いで出かけなければならないタイミングでのこの忘れ物というのは、お妻様と暮らして19年というもの、毎度のように起きて来たことだし、その都度僕はお妻様にクドクドと文句を言い続けて来たからだ。
けれどももう、文句は言わない。なぜなら今日は、いや、これまでもほとんどの場合でも、お妻様の朝の遅刻や忘れ物は「僕にも原因があった」のだと、今の僕は思っているからだ。