本業は大丈夫か?
一方で、素朴な疑問が生まれる。なぜ東大に入ってまでクイズに真剣に取り組むのか?大学の勉強は大丈夫なのか?
医学博士で日本学術会議会長などを歴任した東京大学名誉教授・黒川清氏は『東大王』を見た感想をこう述べている。
「こうした学生の知識は体系化されておらず、単なる物知りにすぎず、新しい考えを創造する力を欠いている場合が多い」(『日経バイオテクONLINE Vol.2770』より)
たしかに「東大王」の頭脳はクイズ番組ではなく、学問や研究にこそフル活用されるべきなのでは……。余計なお世話だが、彼らはこれからどう生きるのか、心配になってくる。
言うまでもないが、社会に出たらあらかじめ「正解」が決まっている問いなど、まず存在しない。本誌は「東大王」の一人、水上をインタビューした。
――そもそもなぜクイズにハマったのですか?
「開成高校のクイズ研究部は有名だったので気軽に見学に行ってみたのですが、実際に早押しクイズをやってみると面白いなと感じたのが始めたきっかけですね。毎日、ある程度の時間をとってクイズの勉強をしていました。
高校時代の成績は中の上くらい。勉強はそこまで熱心でなかったですが、受験のころは毎日3~4時間くらいは机に向かっていたと思います」

自ら長時間勉強を続けられるタイプではないと言う水上。それでも東大理三に現役合格するのだから、さすがである。
――なぜ大学でもクイズを続けたのか?
「クイズ研究会には最初はとりあえず籍を置くくらいの軽い気持ちでした。『東大王』に出ることになったのは、大学で予選会があったので出場したら勝ち抜いたという流れ。とくにテレビに出たかったわけではないですね」