どこまでもクール。テレビ番組で注目されても、浮かれている様子はまったくない――。他の3人はどうなのだろうか。
大学院に在籍する鶴崎は、幼いころからの夢である数学の研究者になるべく、着実に歩んでいる。
鈴木はクイズ研究会に所属する一方で、投資家の瀧本哲史氏が顧問を務める企業分析を行う自主ゼミに参加。企業弁護士を志して、いまは司法試験の予備試験の勉強に集中しているという。
本誌は最年長の伊沢にも話を聞いた。
――大学院では農業経済を学んでいますが、その道に進むのでしょうか?
「もともと興味があって経済学部に入りました。とくに租税論が面白いと思い、研究していました。その中で、日本の農業や畜産の補助金制度というのは非常に特殊で、豚肉の保護関税や牛乳の生産者制度は共産主義的とも言われています。
そういう諸制度は経済学的にどうなのかという疑問があり、研究をしたいと思ったのが、農学部の大学院に進学した理由です。
ですが、いまのところ、仕事に生かすことはあまり考えていなくて、あくまで学問の対象として興味があるということです。1年半前くらいまでは研究で身を立てることも考えていたのですが、向いてないかなとも思います。
やはり上には上がいる。東大の研究者は本当に四六時中、研究のことばかり考えています。僕はそこまでではありません(笑)」

クイズでは食べていけない
――伊沢さんはウェブメディア「クイズノック」の編集長を務め、ユーチューブで映像配信もしています。やはりクイズで身を立てる?
「クイズは好きですが、本当に向いているかもまだわからないですし、食べていける職業なのかという疑問もあります。将来の仕事が保証されているわけでもありませんし、クイズ一本というわけにもいきません。
父はサラリーマンでテレビに出ることは喜んでくれていて、ことさら何も言われません。母も応援してくれて、『猫背に見えるからちゃんと姿勢を正しなさい』と言われたことはありますね。
恥ずかしくないようにふるまいを直してくれるのは、ありがたいです。両親から『学業は疎かにするな』とは言われています。ただ僕の自主性に任せてくれていて、『自分でその道でちゃんとやれるなら、やればいい』と言ってくれています」
――大学でクイズにかけた時間を学問や研究に使ったほうがよかったという後悔はないですか?
「クイズを始めたのは単純に楽しかったからで、何かの役に立てようと思って始めたわけではありません。東大に入ったからと言って何かを背負う必要はないのかなとも思っています。18歳のころ、勉強ができたからというだけ。
経済学部時代の仲の良かった同級生は大手企業に入ったり、公務員になった人も多いです。みんな自分のやりたいものを持っていて、良い意味で距離感を保って、僕がクイズに取り組んでいることを楽しんで見てくれていると思います。
いま考えていることは、学業と両立しながら、編集長を務める『クイズノック』のサイトを大きくすること。いまの僕ができることはクイズの楽しさを広めていくことかなと」
質問に対する「回答」もカンペキ。正解のない社会に出ても、彼らが活躍する姿に期待したい。
「週刊現代」2018年5月26日号より