その差は最大6000倍!米国「CEOと従業員の報酬格差」がスゴイ
ちなみに最低は20万分の1「ペイ・レシオ」とは何か
最高はダイエットプログラム大手ウェイト・ウォッチャーズ・インターナショナルの5908倍で、最低はグーグルの持ち株会社アルファベットの20万分の1倍――。
アメリカで、今年からCEOの報酬が従業員の賃金の何倍かを示す「ペイ・レシオ」の公表が始まり、大きな話題になっている。高いのが当たり前と思われがちな上場企業のCEOの報酬が、実に多様だという実態が浮かび上がってきたからだ。
ペイ・レシオの公表は、細則の決定が遅れて法案の成立から8年を要したが、トランプ政権によるオバマ前政権のレガシー政策潰しの一環で、いつまで公表制度が存続するかは予断を許さない。
これまでに公表を終えた企業は全体の1%程度に過ぎず、傾向を分析するのは気が早いと言われるかもしれないが、あえて日本企業のライバルがひしめく米国企業の報酬体系の一端を紹介しておきたい。そこからは、世界の市場で幅を効かせている企業の意外な強みと弱みが浮かび上がってくるはずだ。
CEOの「ペイ・レシオ」は、トップの報酬(pay)が自社従業員の報酬の中央値(median)の何倍にあたるかを示す比率(ratio)だ。
2008年に起きたリーマン・ショックのような経済危機の再発を防止するために、オバマ前政権が2010年7月に成立させた包括的な金融規制法「ドット=フランク・ウォ-ル街改革及び消費者保護法」(ドット=フランク法)の1項目として公表が義務付けられた。
ドット=フランク法の中核は、金融機関に高リスクの自己勘定取引を禁じる「ボルカー・ルール」だ。金融機関が高リスクのデリバティブ取引を行うことなどを禁じる一方で、金融機関の明確な破綻処理ルールの策定を定めた。また、金融システムの安定を監視するFSOC(金融安定監視評議会)の設置も盛り込んだ。
「ペイ・レシオ」開示を同法で義務付けたのは、適正水準を判断する材料を提供して、株主総会が役員報酬を決めやすくし、ウォール街の金融機関を中心に高騰していた経営者の報酬をチェックさせる意図があったからである。
ただ、1929年の大恐慌の頃から繰り返し公表の是非を巡り賛否両論が闘わされてきた問題とあって、実施の細目がなかなか決まらず、実施対象期間が「2017年7月以降に期末を迎える事業年度から」にズレ込んだ。実際に公表が始まったのは今年に入ってからのことである。
しかも、2017年に規制緩和を唱えるトランプ大統領が就任。今春には厳格な規制や監視の対象となる金融機関の範囲を狭める法案が可決されるなど、ドット・フランク法の規制を緩和しようとする動きが加速している。ペイ・レシオ開示も見直しが取り沙汰され続けており、公表がいつまで続くかわからない。
ならば、今のうちにアメリカ企業のCEOや従業員の報酬の実態を探っておくのも悪くないだろう。