銀行員の「なんちゃって証券マン」化
不景気により顧客の投資意欲は後退しており、マイナス金利政策下であっても、銀行の預金は増え続ける一方であったが、しかし貸出先はなく、銀行は利ザヤを稼げない。
そうなると、銀行としては溜まる一方の預金とその利払い負担を、なんとか利益に転嫁するしかない。
そこで銀行は、投資信託の窓口販売、金融証券仲介業務、保険代理業による販売手数料や信託報酬に注目し、増え続ける預金をこれらの投資信託や証券仲介・保険代理販売の手数料収入に振り替えることで収益(銀行では「役務収益」という)を稼ぐモデルに注力し始めたのである。
こうした大きな変化によって、法人融資担当を除く銀行員、つまり支店の個人部門に配属されている行員は、ほぼ全員が投資信託や保険の販売員となり、証券(債券など有価証券)を系列証券会社に繋ぐ代理人のような存在となってしまったのだった。
つまり証券会社や保険代理店の人間と変わらない仕事を銀行員がやっていることになる。証券マンや保険マンと違い、その道の専門でもない銀行員が、「なんちゃって証券マン」や「なんちゃって保険マン」と化しており、支店個人部門の主業務となっている――これが現在の銀行の本当の姿なのである。
銀行の「信用」使って荒稼ぎ
顧客からすれば、銀行・銀行員だと思っているところに、投資信託や保険、有価証券を勧誘されるわけだ。ただし、証券マンや保険代理店から勧誘されるのとは違って、なんといっても銀行員だから断然信用度が高い。
かくして、なんちゃって証券マン・なんちゃって保険マンである銀行員による投資信託の販売手数料収益は、銀行の支店個人部門のコア収益となった。ちなみに、メガバンクによるその投資信託の販売金額は、いまや本家本元の野村證券や大和証券に次ぐほどの規模となっている。
従来の支店は、住宅ローンを組んだり、振り込み・送金・預金手続きなどをするといった業務に多くの人員が割かれていたが、これらは昨今の報道にもあるように、AIやFinTech(フィンテック)の普及によって、みずほFGで全従業員7万9000人のほぼ4分の1にあたる1万9000人が2026年までに、三菱UFJFGもデジタル技術の活用などで23年度までに9500人分の業務量を削減するとそれぞれ発表した。
そうなってくると、ますます銀行員の生き残る道は、投資信託や保険を販売する金額・手数料実績に頼らざるを得なくなるのだ。