もう借金はできない
これまでの歴史が証明している通り、家計が借金を重ねて消費を増やし続けられるうちは、景気は拡大基調を保つことができます。が、ひとたび家計がその借金に耐えきれなくなると、景気は一転して失速する。
その点、アメリカではすでに中間層以下の世帯を中心に、借金に借金を重ねる消費が横行する状況になっている。なかでも、自動車ローン、クレジットローン、学生ローンについては、延滞率上昇が懸念される状況なのです。
近い将来に借金の延滞率の上昇が本格化してくれば、次に貸し剥がしが巻き起こり、また新たな融資が手控えられることで、消費は一気に減退していくでしょう。
つまり、本格的な景気後退が始まるのです。それがいつかは明示できませんが、今年起きてもおかしくありません。仮に今年起きなければ、来年には景気後退の確率がさらに高まる。
少なくとも、2020年には借金による景気の好循環は維持できなくなっていると思います。

当然、そうしてアメリカ経済の失速が始まれば、真っ先にアメリカへの輸出に依存する中国経済に悪影響が波及。さらにそれが日本やアジアに波及していくことになるので、日本経済は直撃を受けることになるわけです。
私が世界同時不況を懸念しているのは、アメリカの失速だけを根拠にしているわけではありません。じつはもうひとつの大国である中国経済も、アメリカと同じく民間債務が莫大な規模に膨れ上がり、とてもリスキーな状況になっているのです。
'17年9月にBIS(国際決済銀行)が公表した統計によれば、中国の民間債務(金融機関を除く)は'17年3月末時点で23.4兆ドル(当時の為替相場で2597兆円)。
これはリーマン・ショック以降、4倍増と急速に拡大している計算で、驚くべきことにその債務総額はGDP比で211%という水準です。
かつてバブルの崩壊を経験した国々は例外なく民間債務が尋常ではない水準まで膨らんでいたことを考えると、とても看過できる額ではない。
増税ラッシュが来る
実際、かつて日本では'95年12月末に民間債務がGDP比で221%と過去最高水準まで増加し、その2年後、'97年11月に北海道拓殖銀行の破綻を契機にして金融システム危機が発生しています。
中国の民間債務はすでに日本の過去最高の水準に近づき、いよいよ日本のバブル末期から崩壊後の経済状況に似てきたとも見て取れるわけです。
私は2019~2020年にはアメリカが景気後退に陥る局面を迎え、その悪影響が中国や日本、アジア、欧州にも行き渡ることになると予測します。あるいは、アメリカに関係なく中国そのものが景気低迷に苦しみ、その悪影響が日本やアジア、欧州、中東、アフリカに広がっていくことも想定しています。
いずれにしても、世界同時不況が起きたとき、アメリカと中国の好景気の恩恵を多大に受けてきた日本こそが、先進国でもっとも悪影響を受ける国になる。その日は刻一刻と近づいているわけです。