前述したように、東京五輪以降の日本経済や国民生活がどうなるかを考えるとき、今後は少子化やAI、電気自動車といった技術革新の流れが本格化し、日本に新たな難題をもたらすという点も見逃せません。
なぜならそれらが日本の賃金、雇用、企業に大きな変化をもたらすからです。
たとえば、われわれの「賃金」について考えると、その見通しは暗いと言わざるを得ません。
なぜなら少子高齢化という病を抱えた日本では、これから社会保障を含めた財政が行き詰まり、早晩消費税、所得税などの税金や社会保険料の増額ラッシュが巻き起こると予想されるからです。
実際、増税の流れはひっそりと始まっています。所得税はすでに'17年12月に年収850万円超の世帯までが増税されることが決定していますが、これはまだ序の口。
やがて600万円超、500万円超の中間層にまで増税の波が押し寄せることになるでしょう。
社会保険料にしても、今後20年の社会保障費の伸びを考えれば、厚生年金は現在18.3%のところが20%に、健康保険も現在およそ11.5%のところが15%まで引き上げられてもおかしくない。
しかも、2020年前後に日本が景気後退期に入っている可能性が高いことを考えると、名目賃金が現在より上がっていることも考えづらい。
そこへきて増税や社会保険料の引き上げが行われれば、日本人の可処分所得は少なくとも5~10%は減っている可能性が高いといえるのです。
次に「雇用」について見ると、2020年前後には「アマゾン・ショック」が巻き起こっている可能性がある。
インターネット通販のアマゾンが既存の小売業を駆逐していくことを「アマゾン・ショック」と呼び、アメリカでは猛威をふるっていますが、いよいよ日本でも本格化しかねないのです。
その破壊力は強大で、アメリカでは大手家電量販店ラジオシャックや女性用衣料販売大手のザ・リミテッド、玩具大手トイザラスが経営破綻に追い込まれ、多くの雇用が失われています。

アメリカのゴールドマン・サックスの試算によれば、実店舗を展開する小売業が必要とする従業員数は売上高100万ドル当たり3.5人。
それがネット通販だとわずか0.9人で済むので、小売売上高に占める実店舗のシェアが1%下落すると、小売業全体の雇用者数は13万人も減少するそうです。
これを日本に置き換えれば、小売業に従事する労働者は1075万人といわれているので、ネット通販がそのうち215万人分くらいの雇用を奪ったとしてもおかしくないのです。