加速する「就活の早期化」
今年も6月1日(先週金曜日)に、来春卒業予定の大学生らを対象にした企業の採用活動が正式な解禁日を迎えた。その最大の特色は「就活の早期化」が一段と進み、経団連の指針の形骸化に拍車がかかっていることだ。
実際、就職情報大手各社の調査をみると、内定率はマイナビが33.2%(4月末時点)と前年の同じ時期を10.2ポイント上回ったほか、ディスコ(5月1日時点)も42.2%と同4.7ポイント上回り、前倒しで多くの内定が出ている実態が浮き彫りになった。
抜け駆けの横行に企業も学生も疑心暗鬼になる一方で、学生の就活期間の長期化や内定辞退の早期続出といった混乱も少なくないらしい。歴史的に何度も繰り返されてきた問題だが、採用活動を一律に時期で縛る就活ルールが時代や環境にそぐわなくなっているのは明らかで、早期の見直し・是正が急務となっている。
現行の経団連ルールは「採用選考に関する指針」という名称で、もともと経団連に加盟していない企業は対象外だ。経団連加盟企業についても、各企業が自主的に守るべきルールという位置づけで、破った場合の罰則規定はない。
対象の学生は、大学院博士課程(後期)に在籍している大学院生を除く、日本国内の大学、大学院修士課程、短期大学、高等専門学校の卒業予定者である。
採用スケジュールは、今年までの3年間、就活に関する広報活動の解禁を3月1日、面接などの選考活動開始を6月1日とする規定を維持してきた。経団連は、2017年4月に2019年春の卒業生までの継続を決めた理由を、「学生の業界研究、企業研究の時間確保に課題があるとの指摘があるものの、海外留学生や教育実習生をめぐる大きな混乱はみられていないこと、全体的には評価する声も多いことなど、さまざまな点を総合的に考慮した結果」だと説明していた。
だが、冒頭でも記したように、4月末時点の内定率が33.2%とか、5月1日時点が42.2%といった調査が明らかになったことは、経団連の指針が有名無実化し、指針としての役割を果たさなくなっている実態を浮き彫りにした。
しかも、マイナビの調査では、内定したかどうかにかかわらず就活を続けるという学生の割合が回答者全体の89.4%と高く、内定を得ても就活をやめられず、就活期間が長引く傾向が裏付けられた格好なのだ。
この点はディスコの調査も傾向が似通っている。内定を得た学生のうち就職先を決めて就職活動を終了したのが29.5%にとどまったのに対し、内定者のうちの66.3%は就職活動を続けていると回答したからだ。
2つの調査から、前倒しで採用活動をしている企業があれば就活に動くが、実際には本命が別にあり、就活期間が長引いている状況が伺える。
採用活動の前倒しが企業にとってプラスとも限らない。やはり就職情報調査によると、このところ、学生が早期に得た内定を早期に辞退する傾向が強まっているからだ。早期に採用活動を展開しても、滑り止め感覚でトライする学生が多く、企業からすれば採用の前倒しは採算に合わない可能性が高いことが明らかになったと言えよう。

いずれにせよ、経団連が掲げてきた、「在学全期間を通して知性、能力と人格を磨き、社会に貢献できる人材を育成、輩出する高等教育の趣旨を踏まえ、採用選考活動にあたっては、正常な学校教育と学習環境の確保に協力し、大学等の学事日程を尊重する」という方針が守られているとは言い難い状況に陥っている。