漫画エッセイ『目指せ!夫婦ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』を刊行した、イラストレーターの水谷さるころさん。しかし、ツーオペと簡単に言うけれど、現代ビジネスで「シングルマザーが考察する『ワンオペ』と「日本の夫婦』の深い闇」という松本愛さんの記事が多くの共感を呼んだように、実はかなり難しい……。さるころさん曰く、ツーオペ育児以前に、そこには「ご主人様」の見えない壁があるというのだ。

イラストレーターの水谷さるころです。私は今、フリーランスの映像ディレクターの夫と3歳の男の子を共働きで育てています。私たち夫婦は共に離婚経験者で、私は現夫との子が初めての子育てですが、夫は前妻との間に2人の子がおり、現在も養育費を支払っています。

こんな私たちが再婚するにあたって選択したのが「事実婚」でした。どうして事実婚をすることにしたか……。

その理由は離婚経験にあります

 

結婚したらギャラが減らされた!

私は20後半の頃、結婚に焦っていました。私は20歳からフリーランスのイラストレーターをしており、それなりに順調で自立した生活をしていましたが、仕事も生活も一人きりの状態に飽き飽きしており、「パートナー」を求めていました。ひとり暮らしも10年近く……。

朝起きたら人がいて、将来どうするのかをその人と決めて、心穏やかに暮らしたいと願っていました。しかしうちの両親はかなり保守的で絶対に「同棲」は許さないタイプで、誰かと暮らすなら結婚するしかないと思っていました。

そして28歳でつきあい始めた彼氏を、説得して押し切るような形で30歳で結婚しました。2006年のことです。

最初は「これで悩みから解放された!」と思っていたのですが、すぐに自分が「結婚のデメリット」については何も考えてなかったことに気が付きます。

まず徐々に仕事が減りました。私は結婚しても仕事を続けるのは当然だと思っていたのですが「結婚したのだから、当然仕事はセーブされるんですよね?」と言われて「あれ?」と思います。そして、ある仕事相手に以前よりも低い金額を提示されて「結婚したんだから、いいじゃないですか」と言われ衝撃を受けます。

え? 10年間、1人でやってきたときはこんなこと言われなかったのに、どうして「結婚」を減額の交渉材料に使われるの?!

私はずっとフリーランスだったので、世の中に「男女の賃金格差(2017年度の調査では日本の女性は男性の73%!)」があることも、それが「男性は稼いで家庭を守るために賃金が必要で、女性は家計の補助的な収入なので、女性の賃金は安い」という前提で設定されていることも知りませんでした。そしてその考え方が今まで実力主義だと思っていた、イラストの仕事にまで影響するということを初めて知ったのです。

『目指せ!夫婦ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』より ©水谷さるころ

そして、30歳で駆け込むように結婚したことで……私が一部の仕事仲間から「結婚に逃げた」と思われていたことも知りました。共働き前提の経済状況だったにも関わらず、「結婚したということは、男の稼ぎがいいに違いない」と思う人がいたと聞き、世間の結婚に対するイメージと自分のギャップに困惑しました。