戦前からつづく伝統の技
いやはや、速い。
日本を代表するビヤホールに、創業以来の“伝統の技”を継承している「ビール注ぎ名人」がいると聞いて、ブルーバックス編集部きってのビール好き2人で取材に押しかけてみました。案内してくださるのは、先ごろ『カラー版 ビールの科学』を上梓したばかりのビール博士、渡淳二さん。
ゴクリ。
気温30度を超える、蒸し暑い午後。目の前で早技のように次々と注がれていくビールを見ているだけで、喉が鳴ってしまいます。でも、飲むわけにはいきません。なにしろ取材です。平日の昼間です。飲むわけには……、いきません!(泣)
訪ねたのは、ビヤホールライオン 銀座七丁目店。


昭和9年(1934年)4月8日、当時の大日本麦酒の本社ビルとして竣工したビルの1階に開業した、国内でも最も歴史あるビヤホールの1つです。
周囲のビルが空襲で焼け落ちるなかで奇跡的に戦禍を逃れ、戦前からの佇まいを今に残す同店は、ウイークデイの昼下がりだというのに、ワイワイガヤガヤと賑わっています。
たった7人しかいない注ぎ名人
「ビール注ぎ名人はいずこ?」と、店内をキョロキョロ見回す編集部員に、同店の常連でもある渡さんがフロアの奥にしつらえられたカウンターの奥を指さしてくれました。
ひっきりなしに注文が入る各種のビールを、グラスやジョッキにテキパキと注ぎ分けていくのは、この道一筋40年の井上克己さん。全国でも7人しかいないというライオンビヤマイスターのひとりです。日本各地に170店舗を展開するなかでの7人ですから、その腕のすごさがわかります。
とにもかくにも、次の動画を見ていただきましょう。
一切の躊躇なく、一気呵成にジョッキをビールで満たしていく井上さん。
少々あふれてもおかまいなしなのは、ホールスタッフのみなさんがテーブルに届け、からっからに喉を乾かせて至福の一杯を待っているお客さんが最初のひとくちをグイッといくまさにその瞬間に、泡とビールの割合が“黄金比”になっていることを逆算してのことなのです。
その比率、3対7――。ビールに占める泡の比率が30%ほどであることが、見た目にも美しい理想のビールとされています。

『カラー版 ビールの科学』編著者・渡淳二さんトークイベント開催
2018年7月24日(火) 銀座・教文館にて
8種類のビールが飲み放題の懇親会とセットです。
終了 おかげさまで大好評のうちに終了しました!