それらには一体どんな意味があるのでしょうか。
東洋大学社会学部社会心理学科教授の松田英子先生は、さまざまな年代や職業の研究協力者から夢の内容や想い出す頻度について、心理検査や聞き取り調査を行い、統計学視点から「夢想起」に関する研究を行っています。
私たちはなぜ夢を見るのか?
夢にはどんな意味や役割があるのか?
良い夢を見る方法はあるのか?
まだまだ解明されていないことが多い夢について、松田先生にうかがいました。
(東洋大学「LINK UP TOYO」より転載)
夢は「ドキュメンタリー映画」?
──さっそくですが、夢とは一体何なのでしょうか?
「睡眠中の脳は、その人が今まで見聞きした情報を、整理しています。
脳の中にはライブラリーがあって、その人の記憶を『家族』、『友達』、『小学校時代』、『高校時代』、『恋愛』などのジャンル別に整理しています。
そのジャンル分けされたライブラリーに貯蔵された記憶を引っ張り出したりまとめたりするんですが、その過程を脳の中で再生しているのが夢なんですよ。
現時点の科学技術では、夢は自分だけが見ることのできる、『個人的なドキュメンタリー映画』と言ったら分かりやすいかもしれませんね」
──ということは、自分が見聞きしたこと・体験したことが断片的に出てくるということですね。
では、自分の体験以外のことは夢に出てこないのですか?
「そうですね。睡眠環境から取り込まれた刺激以外は。基本的に、体験したこと、目にしたものが断片的に表れて、脳の中でストーリーとして作られていったものが夢なので。
ただ、子どもの頃は外部刺激……例えば絵本や漫画、テレビなどに、夢の内容が左右されやすいという傾向はあります。実際に体験していないことでも映像で観ていたり、想像したことがあったりすると、それらを組み合わせたものが夢になることがあるのです。
そういった夢を見て、『自分が体験していないこと、現実では起こりえないことが夢に出てきた』と思うのでしょうね」
──「子供の頃は」ということは、大人になるとより現実的な夢を見るようになるということでしょうか?
「下の表は、最近見た夢に関する調査をした際の頻出語を年代別に多いものから順に表したものです。
高齢者は『旅行』『仕事』『トイレ』『母』、大学生は『友達・友人』『遊ぶ』『サークル』、高校生は『友達』『学校』『クラス』『部活動』など、どの年代でも自分の生活史上、密接に関わっている言葉が多く見られました。
こうした結果が出るということは、自我がはっきりした高校生以上になると、やはり自分の体験をもとに、より日常に近い夢を見ているということになります」

──とくに昔の人は「夢のお告げ」という言葉を使っていましたし、現代でも「夢占い」という言葉があります。
しかし、未来について夢が教えてくれるということはないのですね。