2018.07.11

「ロックなおやじ」たちはなぜ、自殺してしまうのだろうか?

あなた自身にも関わる問題です
川崎 大助 プロフィール

若いころ(27クラブのころ)に生き延びたとしても、「死の波」はふたたびやって来る。近ごろそれが「ミッドライフ」のロッカーたちを、どんどんさらっていっているように、僕には思えてしょうがない。さらに、60年代や50年代生まれの者に対しては、「自殺」という形をとって。

11年にサイパンの留置施設内で首を吊って自死した、X Japanのベーシスト、TAIJIこと沢田泰司もこの例に当てはまる。66年生まれの彼は、45歳で没した。

ちなみに、英語の世界における「ミッドライフ・クライシス(Midlife Crisis)」の対象となる中年層とは、日本人が普通に考えているよりも広い。だいたい45歳から65歳がそこにあてはまる、と言われている。

言い換えると「子供や若者ではなく」「老人でもない」人ならば、年齢的にはみんなここに入る。そこに、危機がやってくる。そのひとつの例が「ロックなおやじ」を殺してしまう、この波だ。

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06年に刊行されたボーデインの著作『The Nasty Bits』では、「ジョーイ、ジョニーとディー・ディーに(Joey, Johnny, and Dee Dee)」捧ぐ、と記されていた。言うまでもなくこの3人は、ボーデインのほぼ地元であるニューヨークのパンク・ロック・シーンの先駆けとなったバンド「ラモーンズ」の、オリジナルにして主要メンバーだ。

そして、全員がこの時点で故人だった。01年から04年のあいだに、なぜか相次いで死んだ。享年は49から55だった。死因は病死が2人、薬物過剰摂取が1人だった。

 

ボーデインは大のラモーンズ・ファンで、番組内で幾度も言及し、Tシャツもよく着ていた。存命中の二代目ドラマー、マーキー・ラモーンは、彼の番組に出た。ラモーンズが結成された74年、56年生まれのボーデインは18歳だった。

対してラモーンズの面々は、彼のだいたい4つから8つ年上。つまりボーデインからすると、ちょうど「兄貴分」ぐらいの年齢差だ。早い話が、彼はシェフになるよりも先に「ロッカーになっていた」ということだ。少年期に「ラモーンズにやられてしまった」のだから。

ロックな料理人として、ボーデインは各種ドラッグを使用するという悪癖を持つ。そこから立ち直り、ニューヨークのフレンチ・レストラン〈ブラッスリー・レ・アール〉(現在は閉店)のシェフとなった彼は、作家にもなる。

飲食業の「裏の裏」まで語りつくした自伝的メモワール『キッチン・コンフィデンシャル』(00年刊、邦訳版は土曜社から)が、ニューヨーク・タイムズのベストセラー・リストに載るほどのヒット作となる。

そしてつぎに、自らの名を冠したTV番組のホストとして「大」人気を得る。『アンソニー世界を喰らう(原題:Anthony Bourdain: No Reservations)』として日本でも放送されたその番組は、世界各国を旅しては「食べる」彼の姿をフィーチャーしていた。

ボーデインは幾度も日本の都市や地域を取材した。たとえば、今日のアメリカ、いや世界の無数の国々における「〈すきやばし次郎〉神格化」の過程において、彼の番組が大きな役割を果たしたことは疑う余地がない。ボーデインが番組内で同店を訪れて、恍惚とした表情で舌鼓を打つ……このシーンのインパクトは、絶大だった。

僕にはこんな経験が幾度もある。アメリカからやって来た友人を東京で食事に連れていくとき、こんなふうに言う。「この店、アンソニーが番組で訪れたところなんだよ」と。

するとほとんどの場合、友人から僕は、「クール!」という声を得ることができた。なぜならば、僕の友人のほとんどは「ロック好き」だからだ。みんな彼の番組や著作のファンであり、同じ価値観を共有している、との信頼感をボーデインに抱いていたからだ。

そしてこの「価値観」こそが、どうやら人をとり殺すようだ。「波」を呼び寄せてしまうようだ。ではなぜ「ロックな価値観」が、それを抱いた者を死へと追いつめていくのか? 

そのメカニズムについて、次回は考察してみたい。もしあなたがロック・ファンでなくとも、多少の理想主義者であったならば、「波」と無縁ではないのだ。

                    (7月17日公開予定の後編へ続く!)

川崎氏が日本のロック名盤を選び抜いた!

川崎氏は現在、「究極の洋楽名盤ROCK100」(光文社ウェブサイト〈本がすき。〉)を連載中

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