ミシュランより、とんかつ
三木氏が続けて言う。
「ただ、普段着はそうとうに無頓着です。たとえば、宣伝用に作った『yahoo』とロゴが打たれたポロシャツを着ていたり、取引先などが販促用に作ったロゴ入りのバッグを持っていたり。
数千円のポロシャツで会見に出たこともありますし、朝、自宅まで迎えに行くと、スーツのズボンにシャツだけ羽織って、タオルで頭を拭きながら車に乗り込んでくることもよくありました。大事な会議でネクタイを閉め忘れて、私のネクタイを奪ってつけたりもしていました。
孫さん自身、『自分はファッションセンスがない』と公言していますが、そもそもそこに欲がない。欲がないのだから、センスが育つわけがない」
高級ブランドを買い漁るようなことはしないし、高級時計もつけない。
「昔はセイコーの10万円台の時計をつけていました。時計は寿命が来るまで使い続けるようです」(かつてソフトバンクと取引した業者)
では、「食」はどうか。
富豪のグルメといえば、一人10万円超えの超高級店や、世界中のセレブがお忍びで通う会員制レストランなどが知られる。グローバルに活躍する孫氏ともなれば、世界中の超一級品ばかりを胃袋に流し込む姿が浮かぶ。
が、ここでも意外な孫氏の姿が目撃されているのだ。
「要人と会食する際には高級料亭やアークヒルズ(東京・港区)の会員制クラブなどを利用していましたが、普段は上場企業の社長とは思えないものばかり食べていました。
昼食がコンビニ弁当や牛丼、出前なのは当たり前。いまでも覚えているのは、浅草に50種類以上のとんかつを出す『カツ吉』という店があるのですが、孫さんがそのとんかつを『50種類、全部制覇するんだ』と言って、通い詰めたことがありました。
社員2~3人を連れて車で食べに行くんですが、こちらとしてはミシュランの星の付いた店を50店制覇してもらいたかった……。ただ、孫さんとは高くておいしいものならいくらでも食べられるから、関心はない。それよりとんかつ50種類制覇するほうが、価値があるということなんでしょう」(前出・三木氏)