数ある情報のなかで、自分が発信したものがどれだけ届いているのか。 実際に読んで聞いてもらっても、相手の心にどれだけ届くのか。 心理学者の海保博之さんに、伝えるために理解するべき「説明力」についておしえてもらいました。
表現することが苦手な、日本人の文化
表現文化についてまずは一言。
次のようなまくら言葉を耳にしたことはないであろうか。
- 卑近な例で恐縮ですが、・・・・・(具体例を使う)
- たとえで恐縮ですが、・・・・・・(比喩を使う)
- 独断と偏見で恐縮ですが、・・・・(自分なりの思いを言う)
- いきなり結論で恐縮ですが、・・・(大事なことを先に言う)
いずれも、説明効果を高めるためには必須といってもよい趣向なのだが、どういうわけか、日本人はそんな趣向を使うときに恐縮してしまう。
多分「わかりやすく話さなくとも、聡明なあなたならおわかりだと思いますが、念のため」ということであろうが、そんなまくら言葉を言う時間のほうを節約してほしいものである。
さらにもうひとつ、説明力のお国柄についてである。
たとえば、トランプ大統領と安倍総理のおそろい記者会見を見ても、その内容から話し方――さらに実行力まで。これは余計なことでしたが!――まで、どれを見ても負けている。
グローバル化の進む昨今、表現文化の我彼の違いといって片づけてしまうわけにはいかない。説明力が厳しく問われる時代になってきている。さて、本稿では、表現力から説明力を分離して、さらに説得力についても少し考えてみたい。

あなたの説明力は大丈夫? photo by iStock