納豆アレルギーの8割がマリンスポーツ愛好家
納豆は、日本が世界に誇る健康食品。しかし、その納豆にアレルギーを示す人にはある共通点を持っていることを、横浜市立大学附属病院皮膚科の猪俣直子医師は発見した。
もともと猪俣医師のもとには、納豆アレルギーの患者は多くやって来ていた。ある日、猪俣医師は患者の多くが「日焼けしている」ことに気づいた。
その理由を聞いてみるとサーファー、スキューバダイバー、潜水作業員など、ふだん海にいる時間が長い人が83.3%を占めたという。
(どうやらマリンスポーツが関係していそうだ……)
察しがついたが、どう関係しているのかまでは分からない。疑問が解けたのは、患者の1人が中華料理店でクラゲを食べてアナフィラキシーショックを起こしたことがきっかけだった。
実はクラゲの触手には、納豆のネバネバ成分と同じポリガンマグルタミン酸(PGA)が含まれている。海でクラゲに刺されたサーファーたちがクラゲアレルギーになり、交差反応性がある納豆に対してもアレルギーを起こすようになったのだろうと結論付けた。

納豆アレルギーの患者は多くはないものの、発症すると75%が、じんましんや呼吸困難などの重い症状のアナフィラキシーショックに陥る。
しかもPGAは、納豆以外にも調味料として冷やし中華のスープや健康飲料、スポーツ飲料などに含まれているほか、化粧品、石鹸、ヘアケア用品等に保湿剤として添加されている。最近では、それらが原因と思われる症例も報告されている。
「だから、サーファーやダイバーのみなさんは、もしもアナフィラキーショックになったら、マリンスポーツ愛好家であることを医師や救急隊員に伝えてください。アレルギーの治療にはアレルゲンの特定が大切ですから」(有吉医師)
ダニアレルギーの人は甲殻類に注意
納豆とクラゲ以外にも、交差反応性が分かっている組み合わせは多々ある。
「ダニアレルギーを持っている人は、エビとカニにもアレルギーをもっていることが多いです」
そう有吉医師は教えてくれたが、これはちょっとショッキングかもしれない。
エビ、カニに対する甲殻類アレルギーは、花粉症ほどではないが、ポピュラーで罹患者も多い。
甲殻類のアレルゲンはトロポミオシンといって、エビ、カニ、ロブスター等のザリガニ類にも含まれているほか、甲殻類と同じ節足動物に属するゴキブリ類、ダニ類で約80%、軟体動物のタコ類、イカ類、貝類で60%程度、いずれも交差反応が確認されているという報告もある。
ゴキブリの場合は、ダニと同じように、糞や死骸がまじったチリやホコリを吸い込むことで交差反応を引き起こす。
日常的にゴキブリに触れる機会はかなり少ないが、ダニアレルギーの人は、ゴキブリをはじめ、エビ、カニ、タコ、イカなどの食物に要注意だ。